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・・ このシートは「テキスト形式」:別様は図一覧形式」と「スライド形式 ・・
<階層構造レベル「細胞下位の連続性とその取り扱い」について >
**下図をクリック拡大表示し、連続スライド形式で利用しよう**

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階層構造レベル9区分の見方・考え方・進め方」とその「大拡大 表一覧

蛋白質の考え方:PDBjの教育資料集。生物教育用語一覧は「ココ」。東大LSテキスト

上記の表題項目は、このシート「テキスト形式」に加え、「図一覧」・「連続スライド」の3形式により表示される。形式は用途の都合から選択するが、実践的には下図をクリック/拡大した「連続スライド形式」として用いる(Next/Backボタンでスライドを移動させる)。


目次

1. 羽曽部・吉村の提言(メール)、
2. 教師の回答(提言・状況・課題)一覧、例えば重要な回答:A3A6A8A10
3.羽曽部の雑記
* 細胞下位の構造レベルの実践的な対応
  :細胞機能系統に基づく俯瞰構造図の描き方 (学習対応の実践シートはココ


<はじめに:羽曽部・吉村の提言:メール>

__先生、いつもありがとう。お世話になっています。

このメールは京大吉村先生(身近な生物学:羊土社の著者)との話し合いに基づき連絡しています。長文であること、大変恐縮ですが、ご参照いただければ幸いです。また、ご感想など気が向いたときにお願いします。

・・・・・・
 以前から特に昨年から「階層構造レベル細胞下位の取り扱い」について、私宛に一部の方(高校生物教師)からご意見・感想が届いています。また、それらに関連して、伺っていましたが、
例えば下記(事例)のような具合です。

教師のコメント1: 
 生徒にとって、 ゲノム、タンパク質、細胞、器官、個体をつなげるイメージが難しいようです。 特にタンパク質と細胞の関係がイメージできないようです。 タンパク質が集まる=細胞が難しい。 動画なども、いいのですが、 テキストからイメージできないか? 実験を通じて、理解できないか??と考えていました。

教師のコメント2: 
 先日もお話ししましたが、生徒が塩基・ヌクレオチド・DNA・染色体・核の関係性を認識できていないことが多々あります。「先生、染色体とDNAって何が違うの?」などと聞いてきます。聞かれるたびに「染色体は、DNAがヒストンなどのタンパク質に巻き付いたりしてできた構造体だよ。」などと教科書を見せながら説明しておりました。する と「タンパク質ってなあに?」と聞いてくるんですよね。

教師のコメント3: 
 メールの階層構造レベルの「表:ココ」改めてみるとよく出来ていると感じます。「構造レベル」と「要素の配置とその繋がり」。構造はそれだけではただ暗記すれば良いと生徒は考えがちですが、つながりを考えることが重要でそれは単なる暗記ではすまない話である、と近頃生徒に教えていて感じます。

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上記事例は一部ですが、それらの経緯から、また、その状況の解明のため、もう少し考えてみようと思っています。
 つまり、子供は何に戸惑っているのかの状況調査と、今後、皆さんと一緒にその対応策の構築です。それで、その前に、私と京大の吉村さんと話し合い中です。階層構造レベル細胞下位の取り扱いに関わる意見交換を行っています。
下記のメール交換をご参照ください。その理由は高校教師のご苦労に報いたい、また、今現在、更に将来においても、最も複雑系の生物学に「考える基本」の道筋を開きたいという思いからです。
 その根拠は、生物学は確かに経験科学であり、身近な実体の理解として必須教科ですが、ところが、Tellingを旨とする日本語はShowingへの対応が理論的に未完であり、その結果、構造と空間認識の基本を扱う前向きな皆さんの姿勢に寄り添っていないという経緯にあるかと思っています。それでその考察の「視座視点」を考えたいと思っています。・・・このセンテンスこそTellingですよね。すいません。・・・

 ちなみに、既にご存知と思いますが、吉村さんは昨年、教科書「大学で学ぶ身近な生物学」羊土社を出版されています。また、京大の生命科学基礎教育や構造生物学の専門家で、またSSHなどにも積極的、多くの生物学習のビジョンと実践方法を提案しています。私と同じ科研費研究グループでした(銀島、木村、鳩貝先生らがリーダーでした)。奈良先端科学技術大学院大学川上先生(iPS教育)らと我々はメンターでありたいと思っています。その他の気持ちが爽やかな大学研究者もメンターとして控えています。

それで、ご多忙とは思いますが、皆さんのご意見をもう一度伺いたいのですが、いかがでしょうか。
子供はどのようなことで戸惑っているか、についてです。上記を改めてご参照ください。また、必要に応じて、その理由はなぜか?です。
また、今後のために改めてご意見やコメント、なんでも良いので、1行でもお願いできませんか。ご検討をお願いします。気がついた時にご連絡頂ければ幸いです。

例えば、
  皆さんからの話題(提言)は、下記のような具合、協議につながる話題、また有効な方法論など、の観点から経験的な意味も含め気軽におしらせください。私らメンターも対応してコメントを記したいと思っています。

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提言1) 具体的に「蛋白・核酸・酵素」は、どのように説明するのが効果的か?

提言2) 生徒にとって、元素・分子・巨大分子・細胞内小器官・細胞の連続性でネックになっているのは何か・なぜか?

提言3) 「たんぱく質」はどのように説明すると具体性と連続性が示されるか、実感するようになるのか
  :これ結構難しいですよね。高校生に必要な最小必須項目は何でしょうか。

提言4) 染色体とその関連の説明は無限?に続いてしまいますが、高校生に必要な最小必須項目や最小の視座視点は何でしょうか。どうすればよいか?:染色体を見るは「ココ」

提言5) 上記のような複雑系は結局どのような枠組みで扱えば良いか。羽曽部はどのような方法論に基づいて考えているか?

など、
どんなことでも良いです。コメントを羽曽部までお寄せ下ださい。お願いします。
なお、そのコメント・メッセージは、吉村さんと作った「生物学習内容構成原論」下記のURLに「教師の話題」として掲載するというのはいかがでしょうか。簡単・共有は今時の課題で必要ですよね。

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・・・・・
<吉村さんからのコメント1>

羽曽部先生 へ
もちろん、話題として、このメールをご自由に拡散して頂いて結構です。
本当はもっと教材のことを考えねばならないのでしょうが、毎年「その場しのぎ」で乗り切ってきました。 腰が重くて困ります。

**************************************************
吉村 成弘
京都大学大学院生命科学研究科
分子情報解析学分野
〒606-8501
京都市左京区吉田近衛町
TEL&FAX:075-753-7906
e-mail: yoshimura@lif.kyoto-u.ac.jp
http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/labs/chrom/member/2.html

【Check our YouTube Channel and videos!!!】
https://www.youtube.com/channel/UCysbeRypwlmNJ7nVOzHom3A
https://www.youtube.com/watch?v=KlWsMM92blU
https://www.youtube.com/watch?v=83z2wwgfIgo
**************************************************
・・・・・

<羽曽部のコメント1>

階層構造レベル細胞下位の連続性の話ですが、私の元に寄せられた高校教師の意見3つを事例とします。 高校の先生は細胞下位の連続性の説明に苦労しているという話です。代表的な進学高の教師の意見も含まれています。 つくづく頷く話ですが、我々とは明らかに違う点の理解がそれらの方のその解決に必要かなと思っています。
 つまり、我々は、培養細胞技術やウイルス/ゲノム研究などの経験値などに基づき、細胞下位をイメージしている面もあると考えますが、高校教師の多くはその経験がないという点です。実体と概念の連立連携なので、その起点と順列に経験があるかないか、が重要な気がしています。
経験科学の側面が強い生物学には、共有が可能なイメージが確定する「起点となる実物教材が必要」と考えています。 その教材は、下記の経緯から「培養フラスコ、あるは細胞実験」だと思っています。
 例えば、細胞培養用の培地成分の意味意義や細胞培養3要素の詳細を実物を通じて考えたことがある、あるいは、細胞分裂の実像を観察している、染色体が見た、または、ウイルス増殖のメカニズムを研究を通じて理解している、などの経験値です。 現代生物学を構築したその基本に培養細胞とウイルス研究であることの認識は重要な気がします。専門家でも高校生でもモデルとなう実体をイメージする・共有することなく、考えることは無理な話、話し合いが成り立たないと思ってしまいます。
 それで、高校の先生にも細胞培養を経験してもらえれば、それに基づき、生徒に教える時に、わかりやすく繰り返し話し合いができる、それが「最初の一歩」のような気がしています。 多様な生体細胞を個別で説明すると混乱しますが、「収束した原型」つまり、生徒と確認できるモデルが「細胞の培養フラスコ」ではないかと思っています。
細胞実験をしなくても、その「培養フラスコ」を生徒さんと見る・説明する・話し合うだけでも標記の学習が十分成り立つのではと思っています。話し合いが具体的にできるはずと思っています。 大学生でも同様な気がしますが、如何でしょうか。
 もちろん、命題・原理。実証(見方・考え方・進め方)でも、今後まとめてみたいですが、 すでに先生と一緒に科研費レポートが説明しているので、
http://www2.kaiyodai.ac.jp/~hasobe/MET2012/MET-Index/Index-TF-Brows.html
今は、観点を変え、平易に理解出来るようにすることに現在苦労しています。 少し面倒な話より、やはり、やって見せ、言って聞かせて、させてみて、みたいなことが優先するのでしょうか? 終わりが見えない課題と出会ってしまったような気がしています。

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<吉村さんからのコメント2>

お送り頂いた内容、私事のように読ませて頂きました。
>高校の先生は細胞下位の連続性の説明に苦労している
> 特にタンパク質と細胞の関係がイメージできないようです。
染色体の話は、私もこれまで何百回も講義で(高校生等に)話しましたが、学生はピンと来てないのかもしれませんね。
身につまされる思いです。
細胞は顕微鏡などで「見」えますが、タンパク質は「見」えないので、実感がわかないのでしょう。
また、培養細胞で培養皿の中の「細胞」は見えますが、それがどうやって組織を作っているかも実感がわかないのでしょう。
培養皿の中の細胞はいつまでたっても細胞のままで、組織にはならないからでしょう。
近年のiPS細胞や再生医療技術により、培養細胞から組織を作る技術が進化しているので、そのしくみを「実体」を示しながら教えることも可能になるかもしれませんね。
培養フラスコを用いた実験は、細胞から組織、個体への繋がりを教える教材として適切かもしれません。
タンパク質と細胞を繋ぐ教材は、私も考えてみたいと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<吉村さんからのコメント3>

「細胞、小器官、巨大分子・分子」の連続性に関しては、私も戸惑うことが多いです。
「小器官」は、歴史的には膜で囲まれた細胞内構造物を指すことが多かったですが、細胞内に様々な構造物が発見されると、その区別が曖昧になっていきました。 私の教科書では、明確な記述はないですね。 「視座視点」で説明する試み、是非成果を聞かせて下さい。
教材、是非とも拝見させて下さい。 お手数をおかけしますが、よろしくお願い致します。
吉村
<吉村さんからのコメント4>
私は、どちらかというと、細胞よりも小さい「分子」が専門ですので、それに関するご質問でしたらお受けすることはできると思います。
具体的な活動内容がありましたらいつでもご連絡ください。

羽曽部 正豪 HASOBE Masahide
東京海洋大学 海洋科学部 海洋生物資源部門
〒108-8477 東京都港区港南4-5-7 6号館302室
Tel. 03-5463-0550
E-mail. hasobe@kaiyodai.ac.jp

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2. 教師の回答(提言・意見・現状:見方・考え方・進め方・協議)

この枠内は提言の再確認です。

提言1)
  具体的に「蛋白・核酸・酵素」は、どのように説明するのが効果的か?

提言2)
  生徒にとって、元素・分子・巨大分子・細胞内小器官・細胞の連続性でネックになっているのは何か・なぜか?:階層構造レベルの概要は「ココ」

提言3)
  「たんぱく質」はどのように説明すると具体性と連続性が示されるか、実感するようになるのか
  :これ結構難しいですよね。高校生に必要な最小必須項目は何でしょうか。

提言4)
  染色体とその関連の説明は無限?に続いてしまいますが、高校生に必要な最小必須項目や最小の視座視点は何でしょうか。どうすればよいか?:染色体を見るは「ココ」

提言5)
  上記のような複雑系は結局どのような枠組みで扱えば良いか。羽曽部はどのような方法論に基づいて考えているか?:生物学習マトリックス生物学習内容構成論

以上のような具合で、など、 どんなことでも良いです。コメントを羽曽部までお寄せ下ださい。お願いします。

なお、そのコメント・メッセージは、吉村さんと作った「生物学習内容構成原論」下記のURLに「教師の話題」として掲載するというのはいかがでしょうか。簡単・共有は今時の課題で必要ですよね。

 なお、Tellingは大変でやはり構造図でのShowing の重要性を再確認しています。いかがでしょうか。 また、用語は人気者にはあだ名や別名がたくさんのように、生物学用語は、一般名、様態名、実体名、人称名などあだ名がたくさんですが、構造レベルでその用い方がはっきりしてきます。 この点はあだ名の取り扱いなので我慢が必要です。 でも、やはり、様態名と実体名の2種類は必要な気がしいます。

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回答その1(実践における指針)

講演では多くの示唆にとんだ内容を有り難うございます。
あれから考えたのですが、 私自身に内容を落とし込むためにも、 授業の際に黒板の横に、 2系6要素 器官系11区分 階層性 を書いて貼っておこうかと思っております。  実験・実習のレポートにも 考察の 「形 役割 仕組み 由来」 を意識して指導を行ってみます。


回答その2

科学の発想法という本があり、「我々は、なぜ生き物を食べるのか?」(私の授業で言えば、食べ物は生き物だ、となります)という1章があります。この問いのもと、骨を脱灰して切ったり、細胞で文字を書いたり、伸展した細胞の骨格を染色して見せたり、マクロ標本で細胞シートを追うのが私のやりたいことです。たんぱく質の構造をポリペプチドモデルで作ったあと、DNAと糖鎖を3つの鎖として取り上げたいと思っています。


回答その3

提言2)生徒にとって、元素・分子・巨大分子・細胞内小器官・細胞の連続性でネックになっているのは何か・なぜか?

提言2回答2.1
 それぞれの項目が専門的過ぎて連続性を把握する余力が生徒に残っていない

〔回答2.1へのコメント〕

 余力の範囲内は重要・必要ですよね。現状は「仕組み偏重・分子博物学・一筋縄には進まない」と言ってきた先生がいましたが、そのような状況をイメージしてしまいました。皆さんのご苦労は私も同様に感じています。
 それで、対策ですが、気分を変えて「答えは出ないが時には気ままに生物演習」としての取り組み・取り扱いが適切かも、と思ってしまいました。その話し合いが「余力の範囲内」であってほしいと思ってしまいます。でも「雑談」とならない方策も必要ですよね。
 つまり、生徒さんが達成感を感じる環境整備であり、例えば、アクティブラーニングかなと思っています。なお、余力内で簡単に共有可能な事項とは「基本」の取り扱いであり、この場合、その連続性とは課題とする「用語」が該当する「構造レベル」(基本)であり、引き続き、その上下レベルとの繋がりを「考える・話し合う」こと、になると考えるのはどうでしょうか!
 なお、巨大分子とは何か?、具体性が希薄なので、誰でも戸惑う第1の要因ですね。また、タンパク質という用語は便利ですが、構造レベルの巨大分子以上のどのレベルにも使ってしまうので不安定な用語です(第2の要因)。更に、細胞小器官はいくつあるのか、どう区分するか、という細胞構造の「要素」のことかも気になります(第3の要因)。ちなみに、「小器官」が集まれば「小器官系:装置」ができているはずです。機械論で考えるしか方法ないと思っています。
 例えば、蛋白質の原料「アミノ酸」や「核酸」から細胞構造の要素(細胞小器官)を作ってみようというのはどうでしょうか。分子は「点」であり、それらが連なると「線:2次構造(巨大分子)」であり(細胞小器官の部品)、その線がいろいろ絡まって「面や立体:3・4次構造」、それらやその他が集合すると細胞小器官が出来上がる。細胞構造の部品です。
 それぞれについて、細胞レベル下位の構造レベル4段階を丁寧に扱ってみよう、というのはいかがでしょうか。その時、酵素も関係するので立体構造(細胞小器官)へ至る経緯(点・線・面・立体)、その重合体(要素と要素の繋がり)が機能性というのはいかがでしょうか。表にしてみましょう。配置図です。
 なお、上記の提言2が完璧であれば大学院レベルなので、ゆっくりでいいはずですが、基本の理解は重要です。初歩、基礎、上級、専門、応用の全てに共通するのが基本(原理)と思っています。

【要約1】 階層構造レベルの連続性を学ぶ(あるいは解明する)は生物学の最重要課題であり基本課題です。それが分かればPh.D.なので、慌てず騒がず心豊かに「生物演習」が必要です。そのためには学習マトリックスを使いましょう。その具体例(設問)の一つが「蛋白質・核酸・酵素」です。この3用語を丁寧に共有しみましょう。基本が必要ですが、ともかく、「形・役割・仕組み・由来」の視点で扱ってみましょう。
 ちなみに、細胞内の機能タンパク質は、「2系6要素・動物生理の基本」を細胞レベルに転換して、細胞生理の基本とすると、「受容系、シグナル伝達系、蛋白合成/輸送系、骨格運動系」、「膜輸送系、内呼吸ATP合成系、物質代謝系、排出系、細胞分裂系」になります。2系6要素:役割の表現法という感じです。つまり、機能装置として細胞内小器官の区分です。ただし、羽曽部式です。ご注意ください。吉村さん・川上さん、アドバイスをお願い。

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提言2回答2.2
 それぞれの項目をつなぐわかりやすい生命現象の例が少ない(キャンベルでのファンデルワールス力とヤモリの壁登りなど)、等があるように思います。

〔回答2.2へのコメント〕

  1. 同感です。Showing・実感させる、はとても重要ですよね。例えば、分子が集まり実際に見えるようなものが出来上がるが可能であれば「生物教育の適切な教材」となると考えますが、その全ては現実には無理な話で、そのため実感させることは難問です。しかし、見えないものを現象から考察し、その現象から分子・巨大分子・細胞内小器官・細胞を意識させる・考察させるは可能ではないでしょうか。共有することは可能ではないかと思っています。
  2. 例えば、飛躍が大きいですが、細胞培養に用いる培地中の成分を利用すると細胞は分裂増殖しその数がずいぶん増える、という現象です。つまり、増えた細胞内には何がある、という現象はいかがでしょうか。これはそれこそ「細胞の分子生物学」ですよね。いい教科書がありました。見てみましょう。Showingの典型書のような気がします。
【要約2】分子に刺激を与えて可視的な巨大分子にする、あるいは巨大分子に刺激を与え細胞内小器官にする実験方法を募集してみませんか。ただしシャボン玉や細胞膜は巨大分子ではなく超分子です。つまり、その構造体に共有結合は必要なく、ある条件・刺激(紫外線照射)で構造体を形成するので、ダメとします。アルブミン溶解液を加熱すると白濁する塊ができるも熱変性なのでダメ。でも蛋白質が可視化するは有用です。ところで、やはり、酵素反応など生体触媒が必要なのでしょうか。ということから、やはり、細胞培養実験しかないのでしょうか。
 培養細胞を放置すると細胞が大量に増える・できるので、その細胞を低張液に入れると、細胞内構造体が増えた分だけ、見ることができる。生徒さんでも、フィルムバッグ細胞を毎日見ていれば、自然に細胞が大量に増えるので、それを遠心分離して壊せば、顕微鏡で観察すれば、大量の細胞内タンパク質を見ることができる、細胞内小器官が見える、という実験系はいかがでしょうか。DNA抽出実験も同じですよね。
  考えるに適した学齢期の生徒さんに、培養中という1週間の考察時間を与え、培地成分などから考えさせれば、その側には「細胞の分子生物学」を置いておけば、優秀な生徒さんが自動的に出来上がる、知識と知識をつなぐ知識の学び、になりませんか? 
  ご意見をお願いします。募集したいです。 専門家やメンターの方ご助言をください。お願い。ただし、迅速・簡便・低コストが条件です。

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提言2回答2.3
 また、理由はわかりませんが筋組織、神経組織、結合組織、表皮組織が集まって器官が形成されると教科書に記載されていますが組織から器官になるときに細胞のイメージが見えにくくなっているように思いま

〔回答2.3へのコメント:動物組織の解説はここバーチャル顕微鏡観察一覧

  1. 多くの器官は肉眼で確認可能な実体「形」ですが、それらは気相・液相に対面して存在します。その対面した境界面を成しているのが「細胞シート:上皮組織」であり、その表面のウラ側には「脆弱な薄層の細胞シート」を裏打ちする「結合組織:その主要な成分が線維性結合組織のコラーゲン層」があり、また運動性のため筋組織があり、またその情報源となる神経組織が散在すると考えます。もちろん筋肉(筋組織)は細胞の塊、脳神経も同じで細胞の塊です。なお、臓器も器官ですがこれは体腔に露出したもの、器官とは血管・筋肉・骨・脳せき髄のようにウラ側に内在するものに用いる傾向があります。ちなみにコラーゲン線維を生み出す細胞がコラーゲン線維に埋もれて生きている「線維芽細胞」です。
  2. 結合組織はウラ側の埋もれた細胞と物質であるので、中胚葉に由来します。埋もれているものは、上皮組織のウラ側にあるものは神経組織を除き全て中胚葉由来です。オモテがあるからウラがある。ウラを知らなきゃ事実は分からない。ウラの要素が沢山あるわけがない、というイメージです。
  3. この4大組織区分と胚葉性の関係は暗記ものか構造レベルの変化か、皆さんはどうう思いますか?
  4. ちなみに、同様に「細胞が集まると組織になる」という構造レベルの変化には時々戸惑っている人が見え隠れしています。疑問が残ると思います。しかし、構造レベル「細胞」とは「細胞と細胞が生み出す細胞間物質」のことなので、これを正しく捉えると「組織」が成り立ちます。「細胞」だけ集まっても「組織」は形成されません。
  5. 確かに専門的でこまかな知識が必要になるますが、これはやはり構造レベルの成り立ちの理解は不可欠という生物学(経験科学)の宿命と思います。これで生物が嫌いになるということもあると思いますが、複雑系とは構造と空間認識なので避けては通れない課題だと思います。
【要約3】

教科書の表現(表皮ではなく上皮組織のはず)としては稚拙ですが、考えを欲して考えるに適した学齢期の受講者には適切な設問(表現)です。例えば、4大組織が集まった生体組織の様子を構造体の成り立ち(要素の配置と繋がり)から機能体として描いてみよう(描き見て考えてみよう:構造図の作成)。
 そのヒントは組織4区分の日本語用語の意味意義、細胞の基本的な性質である。いかがでしょうか。ともかく機能体の理解には「描き見て考える」がもっとも適しています。スーパーカーの構造をカッコよく描いてみようと同じです。

なお、「外皮、表皮、真皮、上皮、中皮、内皮:皮6つ」、何が同じでどう違う、を考えてみよう(ここを参照)。設問として利用してください。つまり、日本語を使う日本人は、物語る(Telling)は得意で文章も作成するが、実はその実情は見せる(Showing:共有する)ことをあまり意識して作文していないかも。表意文字なら誰でも同じに定義しているというのは嘘で、各自勝手にイメージして混乱しているのが実情かも。それで「皮6つ」のように、その意味(表意文字)を意識して理解しようとはしていない。用語には定義があるので、どうかその基本を我々教師は理解する必要があるような気がする。

組織の学習はなるべく簡単には間違いです。組織は要素の配置と繋がりが明瞭に示された典型なので、考え方の基本が必要なだけです。沢山覚えるではなく基本とそのロジックを学び考察の基本を身につけるが組織です。でも、細胞培養実験から始めるとよく分かるはずです。組織の詳細は「ココ:組織学自主トレバーチャル顕微鏡」で参照してください。

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提言3) 「たんぱく質」はどのように説明すると具体性と連続性が示されるか、実感するようになるのか?
<提言3回答3.1
タンパク質があまりに多様すぎるので説明が難しいかと思います。まずはタンパク質=筋肉のイメージを打破しています。最小限必須項目は立体構造が重要であり、相互作用できるかどうかが立体構造で決定されるといったことでしょうか?

<回答3.1へのコメント1
蛋白質は糖質や脂質などと同列の体成分の総称、あるいは栄養素であり、いわゆる「体は水と蛋白質からできている」という表現は妥当ですが、やはり高校レベルならその他も成分(塩類、糖質、脂質、ビタミン、微量元素、生体元素)の理解も必要なので、同列で扱うと混乱が生じるのではないでしょうか。
 方策としては、5大栄養素の観点から、それぞれを独自に取り上げ、階層レベルで考察が妥当と思っています。ですが、蛋白質の大区分(役割・機能区分)の具体性は多様であり一筋縄ではないですが、問題・難題は、では蛋白質の大区分を覚えることは暗記物になってしまうのではないか、覚えることが多すぎて「無理・ムリ・むり・・」の声が聞こえそうということですよ。
でも、細胞外では、固相構造タンパク質と液性遊離タンパク質の2区分で、1)構造性タンパク質(コラーゲン線維、エラスチンの2種)、液性タンパク質は、2)運搬タンパク質(ヘモグロビン、アルブミンなど)、3)防御タンパク質(抗体など)、4)情報伝達タンパク質(ホルモンなど)、5)酵素タンパク質(外分泌、内分泌)、の5項目くらいです。このほかに細胞外マトリックス(ECM)もありますが、細胞内タンパク質は2系6要素から考えるが必要です。従って、覚えるのは例えば上の5項目だけです。この程度は暗記ではなく、固相・液相・気相の大区分成分に関連させて考察するが妥当と思います。
 つまり、我々は用語・言葉を優先させますが、感覚的には「ここにはこれがあるはずだ」で対応はムリでしょうか。つまり、固相・液相・気相を体の中身の描き方として理解するが必要です。ご検討をお願いします。
 生物用語選定のお世話係の人のご意見をお願いします。白石さんお願い。

【要約】 蛋白質を役割総称から区分するとそれほど数は多くないので、細胞外、細胞内の2区分で表記(配置図)にしてみてください。

<回答3.1へのコメント2
立体構造は機能性タンパク質の重要課題です。1量体、2量体、4量体、など2次構造の巨大分子(MM)が重合(集合)すればいわゆる「細胞内小器官」なので、MMが集まると立体的は受け入れやすい話と思います。点・線・面・立体の話は誰もが理解する普通の話、はムリですか。細胞上位の組織が器官になると同じ考察の自己相似性で対応はムリがありますか?
 ここで疑問がオルガネラとはどこまでの範囲か、いくつあるのか、ですが、器官の上位が器官系(役割系統)なので、細胞レベルでもオルガネラ系統があれば済む話です。でも専門家は装置という観点から細胞機能を扱っているので、いつかできると思います。あるいは、高校生が研究課題として細胞内装置を大整理を行ってもいいと思っています。平素な表現を小難しく格好良く作ってみてください。

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提言4) 染色体とその関連の説明は無限?に続いてしまいますが、高校生に必要な最小必須項目や最小の視座視点は何でしょうか。どうすればよいか?
<提言4回答4.1>
最小必須項目は遺伝の法則染色体、DNA、遺伝子の違い?(用語の意味)あたりでしょうか?

<回答4.1へのコメント>
 Tellingと同時にShowingは生物学習に不可欠なので、動物細胞の染色体そのものを見ることも重要と思っています。Webバーチャル顕微鏡で魚類培養細胞の染色像を見れば(ココから移動)、ところどころに有糸分裂像が見えます。その周囲は核膜があるM期以外の細胞像が多数あります。つまり、バーチャル顕微鏡で拡大縮小・視野移動をしながら染色体像を探す、更にその実像を見れば話し合いの場が成り立つような気がします。実体実像に基づき「話し合いの視点を収束」し、要素の配置と繋がりを構造レベルから話し合うことは有効な気がしています。
 なお、生物とはそもそも「継承」することに一義的な意義を置く物体です。遺伝情報はRNA・蛋白質に継承され、細胞は分裂増殖で継承され、単細胞も植物も細菌も継承するを意図して生きています。それで遺伝(継承:インヘリテンス)の仕組み(原理)が染色体という要素を用いているということになります。 ただし、遺伝の基本という観点は上記から大変重要なはずです。ベイシック ジェネッティク メキャニズムです。「遺伝子とその働き」と「遺伝の基本」:あなたはどちらを知りたいですか、学びたいですかはとても重要ですよね。子供にはどちらが適しているでしょうか?、Telling・Showing の典型のような話ですね。
 別の見解、生徒の話し合いですが、「染色体はなぜ必要?」が有効であろうと思っています。関連して「淡白質・核酸・酵素」も有効ではないでしょうか。

<羽曽部のコメント:まとめのその1>
 何度も繰り返しになりますが、話題は用語によって枠組みされますが、その用語はきっと構造レベルに準拠しています。それで最初はその用語がどの構造レベルにあるか、できるなら共有して、それを起点に話し合うという方法が有効でしょう。その話し合いは形・役割・仕組み・由来(形態・機能・原理と起源・発生)であり、我々は生物学を解剖組織(形態)、生理生化学(機能)、由来(発生遺伝学)の観点から生徒さんに教授する仕事をしています。一度に何でも話し合いは不可能です。経験豊かな生物教師はきっとこれらの枠組みを懐深く引き受けて、時間的なプロセスから話題共有をしているはずです。 どうか子供と一緒に簡単共有(Showing)をしてみてください。どうか一緒に簡単共有を目指しましょう。

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回答その4

メールを読ませて頂き、現代の生物学の理解を拡げる上でも重要な課題に思いました。
吉村先生が下記のように書かれていましたが、私もこの点が重要な気がしております。
>細胞は顕微鏡などで「見」えますが、タンパク質は「見」えないので、実感がわかないのでしょう。
ということから、それぞれのサイズ感を絵で見せるようなことができると理解を助けられるんじゃないかという印象を持っています。
光学顕微鏡などでは直接見えないものは、別の方法で観察する手段が用いられます。(例:電気泳動や免疫染色やその他の分析手法)
細胞、細胞小器官、染色体、DNA、タンパク質、アミノ酸 などについて、まずは、それぞれのサイズ感を絵などで示した上で、それらを観察する手法で整理してみると良いかもと思いました。
そして、さらにこれらを実験で確かめるということができると理解が進みやすくなるのかなと思いました。
個々の説明文には機能面の説明は充実しているのですが、大きさや観察する方法への言及はあまり無い印象があります。
なので、サイズ感覚がなくて読むと、全てが同じくらいの大きさや同じレベルのものように感じる印象を持ってしまうのかなと思いました。これが解消できるだけで、理解しやすくなるかもと思ったのです。
細胞、細胞小器官、タンパク質でも、様々なものがあるので、ひとまとめにするのはなかなか難しいかもしれないのですが。

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回答その5

 いつか細胞培養の実験を行いたいと考えていますが、私自身が未だ実験の操作方法を含め、教えられるほどの理解をしていないので、少し時間がかかると思います。
  以下に、実験を行う前にしておきたいことを思いつくまま書きました。●実験を実施するにあたって押さえておきたいと思ったこと。→以下すべて授業者が理解しておくことでもあります。
・細胞培養とは何かをきちんと理解させること。
・細胞培養の操作について意味を理解させること。
・細胞の構造、接着タンパク質や細胞骨格など高校での学習内容とリンクさせること。
・観察された細胞伸展のしくみが、自分たちの体内でどのような目的を持って行われているのかを理解させること。 
 上記を限られた時間の中で実施するために、テキストを簡素化し、パワーポイント等視覚教材を利用して、説明時間を短く、実験時間や考える時間が増えるよう工夫が必要だと思います。

羽曽部のコメント
:細胞実験はとても簡単です。失敗なくだれでも可能ですが、その仕組みの理解は生物学の全般を理解するようなことになります。
  従って、細胞培養実験は事前に多くを理解するではなく、ともかくやってみる、どのような材料や方法で行ったかの実体験であり、その後の結果観察などの時に、実験終了後の考察の時には、材料や方法の意味意義が自ずと気になるので、そのことを、実験解説やその原理のサイトを参照して、学習者と一緒に考え、教科単元との関連性につなげていく、が重要と思います。細胞培養実験の必要性です。
 例えば、培地成分を考えれば、5大栄養素の成分に関連するはずです。細胞が接着すれば、細胞はどのような仕組みで運動をするのか、という疑問が成り立ちます。
 なお、この観点「細胞培養実験の必要性とその導入理念」は今後も 議論が必要ですよね。

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回答その6

 生徒と話すと、細胞小器官の話をしているのに、生徒にとっては同じレベルの感覚で「分子」や「細胞」などの話が飛び出してきます。そうなると、まず話題になっている階層を確認して・・・の繰り返しになります。
 先生の階層構造レベルをどうやって生徒に定着させればよいのかがここのところの課題です。
ここのところの整理がつかないと、生物の理解が進まないので、考え出すと頭が痛いです。
特にメールにあったように、DNAタンパク質細胞・・・を実感を持って生徒に納得させるのは大変です。 生徒にとって、タンパク質は通り一遍の興味の対象にしかなりませんが、シャペロンだけは、毎年、生徒が興味を持ちます。

コメント:シャペロンという言葉のニュアンスがきっと効果的なんだと思います。用語を共有する必要性です。SHOWingの事例ですね。点・線・面/立体でどうでしょうか:蛋白質・核酸・酵素でもいいですが、核酸という類似用語の扱いは配置図としてまとめるが必要かも。

再回答:シャペロンは下記のような展開でやってます。立体構造とか、立体構造が崩れるということかどういうことかをなんとなく掴んでくれるような気がします。

1)体育館で縄を持って一列にならぶ。縄は離さないで女の子同士で話すためにはどうする?という問いを投げかけます。
2)疎水性、親水性とはどういうことかを軽く説明します。
3)水の中に一本だけポリペプチド鎖をおくとどうなるか考えさせます。
4)アンフィンゼンのノーヘル賞をとった研究を軽く紹介します。
5)細胞の中の状態を話してCのようにいくか再度考えさせます。
6)ではどうする?と聞きますが、けっこう飛躍があるので、山の中で育った子は素直だけど、都会じゃいろいろ誘惑がある。都会で素直な子を育てるには?と問い直しします。
7)6でごちゃごちゃいろんな意見が出てきますが、そのうちよい答えが出て来るので、それを拾いあげて、シャペロンにつなげます。
8)やけどしたときは?でもう一度シャペロンの働きを考えさせます。酵素で熱変性をやっているので、疎水性アミノ酸が表面に出てきたらどうなる?で問いかけます。
9)リボソームでポリペプチドができてそのままならどうなる?と問いかけると、この時点ではエスコートするものがないとダメだと気がついてくれるので、さらっとシャペロンと立体構造の話してまとめます。


回答その7 

 私も「タンパク質の存在」と「タンパク質生成の仕組み」を生徒に理解してもらうのは難しいと感じています。目に見えないものであるということも一つの理由だと思います。また、タンパク質という言葉が栄養素のようなイメージが強いことも関係しているかもしれないと思っています。筋肉にタンパク質が含まれることは納得ができても、植物にもタンパク質が含まれると言うと驚く生徒が多いです。タンパク質は部品であるというと少しイメージがしやすいようです。元素がアミノ酸をつくり、アミノ酸がつながってタンパク質ができるというと、その部分は理解しようとしていると思います。しかし、それがすべての細胞で数えきれないほど働いているというような話になるとイメージがしづらいようです。

コメント:ありがとう。外部からの栄養素の摂取とその要素の構造レベルの話は中学生か高校生なのか、ですが、それよりも、この回答は大好きです。子供の気持ちが見えてきます。
  地球における動物を考えた場合の物質循環としても良い話と思います。アクティブラーニングですね。
  どの視座視点が有効か、時人場所で違いますが、解説は類似するはずと思います。やはり、体の成り立ちの基本ははじめに階層構造レベルであり、同時に、実体と概念の連立連携です。そのため、生物演習:命題・原理・実証ですが、もう一つ必要で、それは「それ本当?:話し合い」かなと思っています。ちなみに、植物のN,P.K(窒素リン酸カリ)の話ってどこで誰がしているのでしょうか?

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回答その8

  1. なかなかご返答できずにすみません。とても難しい問題で、納得のいく回答はないかなあ と感じました。先生の回答は「もっともだ」と思える部分が多いのですが、高校の授業を考えると、実現には困難を伴うかもしれません。
  2. 今のカリキュラムでは細胞・組織・器官の階層性の概念は参考扱いです。これはこれらを扱うべき位置がなかったせいでしょう。しかし、これらの欠如は内部環境や発生を教えるうえで大きな痛手です。かといって今の教科書にこれらを入れ込むと、学ぶ内容が多くなりすぎることも理解できます。
  3. 結局、今の高校生物で扱う内容が多すぎることが問題でしょう。今の高校生は、昔の内容をある程度取り込みながら、現代生物学をも学ばなければなりません。
  4. 私としては、思い切った内容の精選が必要と思っています。とくに全生物を平等に扱うことが、用語の混乱を招くと思うので例えば「植物や単細胞生物は扱わない」ようなことも必要でしょうか。また、分子レベルを扱うなら生態系は扱わないとか…思い切ったことをしないと、先生たちも教科書の内容についていけません。
  5. 次の指導要領にむけて用語の削減も提言されているようですが、私立大学も含めて、指定された用語以外の出題をしないことを徹底しなければ意味がありません。添付ファイルにとくに用語の問題を中心に思ったことを気ままに書いてみました。今回の提言とは少しずれていますが、暇があればお読みください。

コメント:生命科学は知識累積性の典型であり、先生のコメントはまさにツボにはまっています。例えば、基本と応用、つまり、総論と各論という構成が必要ですが、生物基礎と生物はその観点でできているのですよね。我々は常々「総論賛成、各論反対」という公で生きていますが、ともすると学問では「総論つまらない、各論がいいね」という状況も散見しているかもと思います。学習者の視点を集中させるには都合がいいのですが、それでも基本(Basic)も必要だろうと思っています。それは総論の作り方であり、総論は学習レベルに関係のない全ての基本であるので、総論が論理的に段取り良くできていないと後が続かない、という状況が現在かもしれません。言い過ぎかもしれませんが。今我々が話し合いをしている生物学習の「最低必須用語」の枠組みが必要となると思います。大区分や論理的な展開はそれほど急激に増えるわけはないと思っていますが、如何でしょうか。それ以前にその枠組みはまだないのかもしれませんね。

<高校生物を教えるうえで困難を感じること>
1.細胞とタンパク質の関係性について
 @ タンパク質の扱いについて
今年のセンター試験ではインスリンが2本のポリペプチドからできていることが出題されました。こういう出題があると進学校では、タンパク質の本質をはずれた暗記をさせる必要が生じてしまいます。
大学によっては必須アミノ酸を問うものや、SS結合をつくるアミノ酸を問う出題もあります。免疫グロブリンの作図ではSS結合の位置が問題となります。ここまで高校生物に必要でしょうか? 詳しく扱うほどタンパク質の本質が見えにくくなるように感じます。
 また、化学でもないのに、官能基の名前やペプチド結合、二次構造、三次構造、四次構造等を例を含めて覚えなければいけません。ペプチド、ポリペプチド、タンパク質の用語の使い分けも判然とせず、こういうことで労力を使ってしまうとその先まではいけません。
 A タンパク質の理解の難しさ
 タンパク質の理解を困難にしている要因の一つに、用語の問題があると考えています。
 タンパク質では名前とそれの示すものが1対1で対応しないものが多いと思います。例えば酵素は機能から見た総称だし、アミラーゼはその一部です。そして、アミラーゼは特定のものをさす場合と、デンプン分解酵素の総称として用いられる場合があります。大麦のアミラーゼと唾液アミラーゼと膵液アミラーゼが異なることを理解させることは困難です(先生だってちゃんとわかっているか怪しい)。ヘモグロビンは固有名詞的だけど、ヒトとウシのヘモグロビンは違います。こうなるともうわけがわかりません。
 また、文脈やテーマによって用語の示す範囲が判然としないことも多々あります。ペプチド・ポリペプチド・タンパク質の使い分けはその一例です。
 B どうしたらいいの?
 今のところよくわかりません。ただ用語を減らすことと使い方の整理は欠かせないでしょう。
 C 細胞との関係について
 タンパク質は見えないので、これを細胞レベル以上と同じように理解するのは難しいでしょう。最近の教科書はタンパク質を見えるかのごとく書いているものが多く、正しくはないかもしれないけれど、高校生の理解としてはいいのかもしれません。
2.生物用語について
 生物の理解を困難にしている要因の一つに用語のあいまいさがあると考えます。例えば、細胞・組織・器官という階層は、脊椎動物ではわかりやすいですが、クラゲになるとよくわからないし、植物では概念が違うように感じます。高校生物は建前上、あらゆる生物を前提にしているので、それが用語を混乱させる一因かもしれません。
混乱を招きやすい用語の例をいくつか挙げてみることにします。
@ 細胞小器官  どの範囲を指すか不明なことが多いようです。高校では使わなくても済むように思います。とくに原核生物に言及されると困ります。
A 染色体  DNAと区別されておらず、文脈によってDNAと同義に使われることも多いようです。でも区別される場合もあり、どう使い分けるか不明です。
B 遺伝子  ほとんど理解不能な用語です。メンデルの使った意味での遺伝子は現在ではほぼ使われていないようです。何かを指すというよりも概念のような感じで使い方の難しい用語です。DNAと染色体と遺伝子がほとんど同義に使われることもあります。
C 植物  「生物基礎」での植物は被子植物のことを指す場合が多いようです。しかし、文脈によってはシダやコケを含むし、藻類を含む場合もあります。範囲を限定して用いるべきです。
D ゲノム  真核細胞では配偶子の遺伝情報として定義されます。でも大腸菌のゲノムといったりミトコンドリアゲノムと言ったり、インフルエンザウイルスのゲノムと言ったりし、これらは遺伝子やDNAと言い換えても大して意味が変わらないようです。対象によって定義が変わるようではうまく使えません。

とくに入試問題にあいまいな用法の用語を使われると、それだけですごく困ります。多くは昔、用語がつくられて、その後の生物学の発展に伴って、使い方の範囲が変わったり、定義が変わったりしたのでしょう。それ自体は当然のことですが、それがきちんと定義されないまま、いろいろな人がいろいろな使い方をしてしまっているようでは困ります。たぶん研究者は同じような人と交流するので、問題ないのでしょう。でも、一般への普及や高校生にとっては定義のあいまいさは理解を困難にします。専門用語がきちんと定義されていないのは、理科では生物ぐらいだと思います。

以上、思いつくままに書いてみました。

羽曽部のコメント
:入試問題や教科書内容については私の守備範囲を大きく超えてしまいますが、先生の現状に対する明晰はご意見にはいちいち頷いてしまいました。先生のコメントから考えたことは、常々、生徒さんや受講者に寄り添い、丁寧な対応をされている実践担当の教諭の方々が、少しも慌てることなく授業実践に取り組まれるにはどうしたらいいのか、ということです。それで、またお騒がせな話なのですが、個体生物学を扱う場合の視座視点として私が考えていることを改めてまとまりなく書いてみました。「試論:階層構造レベル9区分の見方・考え方・進め方」です。 左記下線付き文字列をクリックでご参照ください。
  私としては、生物教師に必要なバックグラウンドと思っています。特に、若手の教師が自己研鑽されるその捨て石として利用してほしいと思っています。ただ皆さんの戸惑いにならないか、混乱させていないかと少し心配していますが、それについては、重々自戒して対応していきたいと思っています。それで、ひとまず、新たな提言ということです。ご意見をください。

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回答その9

「階層構造レベル細胞下位の取り扱い」についてですが,私も,授業の中で特に気を使っている箇所です。 やはり,生徒は「ゲノム,染色体,DNA,遺伝子」の関係性について理解しづらいようです。 私も丁寧な説明を心掛けていますが,まだまだ表面的な理解のようで,「起点となる実物教材」というお話は大変魅力的です。是非,欲しいところです
 確かに,「タンパク質」についての生徒の理解も曖昧だと思います。教科書では,タンパク質の説明に「酵素」を用いていますが,ヒストンのように構成成分でもあり,その働きが多様であるためか,「いったいタンパク質って何?」というアバウトな理解にとどまっている気がします。
「子供は何に戸惑っているのかの状況調査」に関しては協力できるかもしれません。

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回答その10

 細胞下位の連続性とその扱いについてですが、その前に、私の考える高校生物学についての姿勢について述べたいと思います。それは、生徒の興味・関心をいかに持たせるかです。授業や実験など日々の取り組みは、生徒の興味・関心につながっているか、これを常に意識しています。
 例えば、顕微鏡を扱う実験では、観察、結果(スケッチ)、考察となるわけですが、そこには動きのある方が当然興味・関心は高くなります。変化することが必要です。さらに、その現象を考えている時、みんなでディスカッションしている時は、非常に楽しそうです。
 羽曽部先生に教えていただいている細胞培養実験は、これまで行ってきた実験の中でも特に生徒の興味・関心を引き出させることができる実験でした。このことがこの実験をやらせてもらっている理由です。各校の状況に応じて、原理も含めて実施できるように考えることが、教員にとっての楽しみにもつながっている気がします。
 では、1) 具体的に「蛋白・核酸・酵素」は、どのように説明するのが効果的か? ですが、これは具体例を挙げること可視化すること、ではないでしょうか。具体的には、そのときの話題になっていることを扱うことができれば一番いいと思います。

羽曽部のコメント:先生ありがとう。可視化に同感です。細胞を機能の観点から理解するには、膜系構造体なので、細胞を閉鎖性膜領域区分から描き、その要所に、機能体(小器官)の様子を描き、その上でその繋がりを示す方法が適している、が一般的というよりこれ以上のことはないと思います。。構造図を学習者が自分で作ること、それが学習だと思っています。つまり、「描き見て考える」の繰り返しによる俯瞰構造図です。それで、描くプロセスその起点を与えるは教師の仕事と思っています。

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回答その11

器官系の授業の報告です。
 内臓の場所から魚の内臓、器官系のピックアップと持っていき、器官系のつながりまで考えさせました。 授業形式は質問、話し合い、質問、話し合い、器官系まではスムーズでした。ここまで20〜25分です。
 その後、器官系のつながりを考えました。少し時間がかかりましたが、各器官系のつながりと働きを確認できました。ここまで10分。
 最後に「細胞培養」の実験を振り返り、もう一度細胞とタンパク質についてのつながりを確認し、細胞が組織、器官系へのつながりが確認できました。
私の授業では、東大、京大、医学部を目指す生徒(「生物」が受験に必要)は2/3ぐらい、実は必要ない生徒も若干いる中で、最後まで別の教科を勉強しないで、話し合いをしていた生徒に驚きました。
 授業の中で十分とは言えませんが、器官系から組織、細胞、タンパク質、DNAへとのつながりは確認できたと思います。私自身も授業の準備にとても時間がかかりましたが、とても勉強になりました。CGとお絵かきも同時に行うには工夫も必要と思いました。 本当にいい経験をさせていただきました。

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回答その12

 用語集は、教科書執筆者や、入試問題作成者によって、用語が無制限に増加する事のないよう歯止めをかける意味があります。例えば「階層構造」は生態学で森林の垂直分布を示すことがあります。 そもそもの視点が便宜的なので、現場の教育の視点からは、使えるようになっていません。
  例えば、3次元のマトリックスを使えば相関する用語を芋づる式にたどることができそうですが、3軸を何にすべきか?または、5軸必要なのではないか?という議論はなされていないと思います。
 私は、Webのように軸を固定しないほうがいいと思っています。spyseeのように、リンクをたどることが理想ですが、軸がないと自分の位置を俯瞰できないので、視野が狭くなります。
羽曽部先生のWebは、かなり理想的ですが、自分の位置がわかり、向きがわかると良いなと思っています。

コメント:多くの方から「迷路のようだ」「少し間違いがある」などの意見をいただいています。これをはじめて15年は経過したと思いますが、最初から「建築現場」です。構造を確かめたいと思ってみなさんの感想を聞きながら「要素の繋がり」を考えていますが、きっといつまでも「建築現場」ではないかと凹んでいます。でも、視座視点・ベクトルは必要であり、今現在の話し合いから、日本語を使う我々には何が必要かが見えてくるような気がしています。
  共有すべきことについて、Telling とShowing がどう違うかを考えるに生物教育はとても良いモデルかもしれません。その基本は「普通のことと違和感を感じること」の位置付けと導入方法のような気がしています。違和感を感じることを棚上げすることなく、振れ幅少なく話し合いができることをいつも願っています。
  学習者が未来を見る窓枠はどのような形をしているのか、もう少し一緒に考えたいと思っています。いつもポンコツですいません。

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回答その13

 待機中

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【羽曽部の雑記1】

そもそも、昔も「図説解説・用語項目箇条書き」が生物学であり、30年前の生物の教科書や副教科書(図説集)はその知識習得学習で完了した。つまり、SHOWingが誰が見てもそれで十分・完了した。それ以上の図説はその時は出来なかったはず。充実していた。鳩貝先生らの努力である。
 しかし、その後の分子生物学・細胞生物学の発展(知識累積性)に基づく今現状では、教科書や副教科書の図説解説には、その図説を裏打ちするいろいろな情報が絡んでいるので、実際にはそれら成書ではShowingできない実情になってしまっている。いわゆる「隠れ分子博物学」なのかもしれない。
 図説集の厚さは変わっていないがその内実は5倍くらいの厚さが必要な状況である。つまり、紙媒体では対応に無理が生じる現状となってしまった。今後もそれは果てしなくつつ続くはず。我々の悩みである。では、ペッパーには可能なのか、が問われるが・・・。
 しかし、本の厚さの問題ではなく、当たり前であるが、「現実実体の取り扱い」をこれまでの生物では軽んじているし、考察探求しようという姿勢が無理なのかも、それで「科学技術教育振興事業」が大手を振って歩いているが、それでも、実体に対する「構造」の取り扱いに対し、謙虚に生徒のために対応していないことが混乱の原因かもしれない。商品流通社会の実情の問題ではなく、教育と未来に対する実情への謙虚さが必要ということだと思ってしまう。いつの時代でもフェアが必要である。ルールもジャッジもいない活動は混乱の原因である。その対応に適しているのが科学である。 教育・学習があるは「子供の未来の窓を閉じないこと」と思う。その窓枠からよく見えることが重要と思う。自主的に学ぶは個人の責任、でも、見せられないは社会の責任かも。
 つまり、要素と要素の「繋がり」にその意義が求められている現状においては、その対応は優れた教師の面接対応であり、その技術がWebテキストやWeb図説による対応がであろう。知識レベルに依らず複雑系を基本に基づき平素に話し合える教師の役割は多大であり、その前向きの姿勢にはいつも深く敬服する。自主研鑽に前向きな教師とその生徒を見て、当たり前に敷石・捨て石であることに違和感は感じない。 実践の場における過重労働を棚上げしてはいけない。危険である。心豊かに生徒を見守る寄り添うにはそれなりの時間的な保証が不可欠である。話し合いの経験値を欠落させてはいけない。
 人はペッパーとは異なり、その場その時その課題に対して、素通りすることなく、瞬時でその解説プロセスを把握・対応できるが、図説そのもの一枚画像ではSHOWingが成り立たなくなっている。 これが現状であり、誰も太刀打ちできない状況である。
 それで、確かな知識に基づく創造的な学習の以前に「基本」の確認と共有が必要ではないか、と私は思っている。懐深く全てウェルカム、一緒に繰り返し話し合いができるようになりたい・したいと思う。

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