“考える生物学研究会(ACU):TopPage”
< 細胞実験学習に基づく “考える生物学” :生物学習内容構成原論>
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生物学へ、生物学演習(時には気ままに生物演習)へ 細胞実験受講者へ:原理解説
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<目 次>
1. はじめに:背景と目的 …………………………………………………… p.1
2. 細胞培養実験の必要性と実践方法 ……………………………………… p.2
表1.実験学習「細胞培養実験」の概要
3. 細胞実験学習の特色と展開法 …………………………………………… p.4
図1.細胞実験学習とその発展展開:命題・課題・考察とその発展学習
図1の解説(実験学習と発展展開)
4. 学習内容の構造化:その論理と学習マトリックス …………………… p.7
図2. 個体生物学の視座視点と学習マトリックス
表2. 考察の視点の基本(事例)
表3. 細胞生理の基本(細胞機能)の考え方
5. 終わりに:細胞実験学習の展望・謝辞 ………………………………… p.11
付録1. 実験教材「細胞培養実験」の特色と実践導入の留意点 ……… p.12
付録2. 細胞実験学習における協議事項(事例) ……………………… p.13
付録3. 動物体の構造レベル(階層性)に応じた視座視点一覧 ……… p.17
文献・Web資料 …………………………………………………………… p.18
付録4. 実験学習の構造化:実践の場で用いる話題・協議の事例(イメージ)
*挿入図を図一覧で表示
付録2の項目:A. 細胞培養実験の前提、B. 実験材料・生体物質について、C. 細胞・培養細胞について、D. 細胞実験の経過・結果について、E. 固定染色標本を通じて、F. 結果考察、G. 総合考察、H. 細胞培養実験に基づく発展考察(1)、I. 細胞培養実験に基づく発展考察(2)、J-1.細胞に関連して、J-2.組織と由来に関連して、
J-3.コラーゲンに関連して、J-4.細胞周期に関連して、J-5.機能発現に関連して、
<概 要>
再生医科学の目覚ましい進展や明るい再生医療の将来像は身近な実情となり、10年程度でのiPS細胞に基づくそれらの展開は本邦の輝かしい成果である。その社会現象化は実践的な教育現場へも波及すると考えられ、その基礎教育の必要性も明らかになると考えられる。本編は、細胞実験学習に基づく「考える生物学」を標記とし、新たに開発した「動物細胞の実験教材キット」の利用法・学習法、更にその展開法について、その対象者「高校生物教諭あるいは教育系大学院生」に向けて概説する。つまり、細胞培養実験学習の意味意義、実践導入法、学習展開法である。これらは、従来とは抜本的に異なるマクロ・ミクロ域にわたる本質的な個体生物学の学習内容構成論の構造化に向けた新たな視座視点(論理性と実効性)を提供すると考える。高校生物教育・大学基礎教育における「知識と知識をつなぐ知識を教える教育:考える学習」の具現化を期待して。
文責:羽曽部正豪(東京海洋大学)、吉村成弘(京大大学院生命科学研究科)
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1. はじめに:背景と目的
「原理・法則」という枠組みが曖昧な生物教育・生物学習は「一義一元的な取り扱いには馴染まない・一筋縄には進まない」という高校教師の弁がその実情を物語る。現行教科は「仕組み偏重・分子博物学」と揶揄する生物教師の戸惑いにも頷ける。しかし、科学の拠り所は対象とする物事の「起源、構造、運動、変化」を解き明かすことと云われ、科学「生物」であれば「形(形態)・役割(機能)・由来(起源)とその仕組み(原理法則)」という観点から同様に扱われるはずであるが、やはり文脈ベースでは負担も大きく、従って生物学習のイメージはいわゆる「図説解説・用語項目の確認」が基調かもしれない。
例えば、生物系教科が好き得意と自認する大学新入生に生物学習の初歩「器官系区分・階層性区分を列記せよ」と質問しても実際には要領を得た回答を見ることは稀である(アンケート調査結果、文献1,5、あるいは別サイトへ移動し参照:ココをクリック )。その理由は「高校では習わないから」が大多数であり、高校教師に尋ねると「器官系は中学の扱い」というもっともな意見を見る。その事実を生物系研究大学教員に尋ねると「心配は無い・大学専門を通じて自ずと理解する」という達観に収束する。なお、学生が意識する生物(受験)学習の要点には「繰り返し確認・暗記」という意見が多数を占める。つまり、試験対策とは別次元において「知識・用語の単離浮遊化」は顕在化している。実践学習の場が「断片的な知識と知識をつなぐ知識を学ぶ学習の場」であるならその対応策も必要であろう。
本編は個体生物学を学習対象に「考える生物学・生物学習の形」を志向する。その具体的・実践的な導入展開法(理論と実践)を「新たな細胞実験学習の導入」に基づき解説する。生物学(高校)を対象とした「学習内容構成論の再考」に向けた取り組みである。
なお、本編で紹介する内容で実践学習の場で利用可能な項目(例えば、細胞実験法、学習内容の構造化など)はウェブ資料として公開済みである(ウェブ検索用語には「実演生物学」、その概要は文末「Web資料」に記す)。
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2. 細胞培養実験の必要性と実践方法
「一筋縄には進まない・扱えない」という生物学習・教育の内容構成論の新展開には新たな「何か」が必要であるが、その前提には生物教育の理念「実体と概念の連立連携」が妥当であろう。その方策は生物学の基幹的要素・動物体の基本単位「細胞」を起点とする学習内容とその発展展開が合目的的であると考える。従って、本編では「動物細胞の実験学習」を必須課題として取り上げ、実践的には新たに開発された細胞実験システムとその特色(下記)に基づく学習展開「細胞培養実験に基づく考える生物学」を計画する。なお、その論理(視座視点)は動物体に与えられた古典的ロジック(見方・考え方)の再考に基づき新たに構築した「個体生物学の学習マトリックス」による補完である(「4.学習内容の構造化」を参照)。
つまり、必要とする細胞実験の動物細胞培養技術とその培養細胞は一般にはかなり専門的であり、高等学校などの実践学習の場(授業実験)における扱いはほぼ不可能と考えられているが、本編ではその実践学習の場の状況に適した細胞実験システムを導入した。実験教材の要件「迅速・簡便・確実・低コスト」を念頭に開発された魚類株化細胞による細胞実験キットは「時・人・場所」を選ばずその実験学習を可能とする(献文3)。その実験学習では、細胞培養、細胞形態、運動性、更に基本的な性質(膜系構造体、足場依存性、細胞シートの形成)の観察を容易に成立させる(文献1,2)。つまり、実践学習の場に則したこれまでにない「利便性・実用性・発展性」に優れた実験教材の確立にその根拠を置く。
その教材実験「細胞培養実験-1,-2」の概要(目的・特色・方法など)は「表1」に概説する通りである。またその実践導入における特色と留意点は「付録1」として文末に付記した。
なお、本細胞実験キットの利用に基づく実践的な調査・評価(授業実験)は既に各地の協力者により行われ、その有効性に疑いはないと考えられる。補足:協力者は細胞培養技術に関する知識・専門性を持ち合わせない方、受講者は主に高校生である。実施方法は通常の宅配輸送で送付され細胞実験キットと通常の実験室、一般的な備品、下記のような実験マニュアルに沿った実施である。その受講者数は通常数十人であるが、100名以上の受講者に対する場合でも実践的に可能であることが示されている。
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表1. 実験学習「細胞培養実験」の概要(Exp.1、Exp.2)
名称 |
Exp1.動物細胞の形態と運動性:カバーガラス(CG)培養による細胞染色標本の観察 |
Exp2.組織形成・形態形成に関する基礎実験: 通称.培養細胞による「お絵描き実験」 |
実験学習の目的 |
生きている動物細胞(ファットヘッドミノー由来の魚類株化細胞FHLS)を用い、細胞培養・観察評価・実験検証を行い、動物体の成り立ちに関わる原理・法則の一部をその基本単位「細胞」レベルから考察する。つまり、実験に関わる種々の現象や疑問に基づき、生体組織細胞の様態との類似性・相関性を協議し、当該の学習領域への展開を図る。 |
はじめの一歩の細胞実験。1)動物細胞の培養と形態観察を行なう(経験値とする)。2)細胞の形態や運動を通じ体の基本単位に関わる基礎的な知見を確認する。 |
1)動物細胞の基本的な性質「足場依存性・細胞シートの形成」を確認する。2)培養細胞が生きる様態やその仕組みを「生体組織細胞との類似性から考察」する視座視点を習得する。 |
材料
方法の
概要
・特徴 |
1)専門的な細胞培養技術(機器・無菌操作など)を必要としない細胞実験キットを用いる(迅速・簡便・確実・低コストでの実施が可能)。2)培養細胞FHLSはフィルムバッグに分散浮遊状態でパッキングさているため「Ready-To-Use」であり初学者の扱いに対応する。3) 実践学習の場の時間的制約に対応させるため、細胞は遠心分離・再浮遊によりその接着伸展活性を最大限に引き出し用いる。4)細胞活性は温度依存性であるため培養温度を「30℃程度」として細胞運動の迅速化を図る(使い捨てカイロなどを利用する)。 |
カバーガラスを培養基質とし培養液・遠心再浮遊した細胞液を滴下する。任意の培養時間(例えば15分)の後、固定・染色・観察を行う。50分授業で完了する。 |
ゼラチン塗抹でシャーレに絵文字を描き、乾燥後に血清アルブミンを加え濡らし、遠心再浮遊した細胞液3mlを加える。70分程度培養し固定染色する。所要時間は約120分。 |
|
|
主な実験材料 |
1)細胞FHLS(フィルムバッグ包装:培養液はWaymouth’s MB752/1、FHLS細胞はファットヘッド ミノー由来の株化細胞)、2)培養液-1(同上:略号B-Med)、3)固定液(主成分グルタルアルデヒド)、4)染色液(クリスタルバイオレット)、5)スポイト(栄研3号)、6)卓上遠心機(約6500rpm)と2ml遠心チューブ、7)一般学習顕微鏡 |
1)カバーガラス、2)樹脂ネット+輪ゴム、3)マーキング色鉛筆、4)トレー(カバーガラス培養器を入れる)、5)スライドガラス |
1)培養シャーレ、2)ゼラチン液、3)綿棒、4)メチルセルロース液(血清アルブミンの代替)、5)培養液-2(十分量のCaを含むB-Med) |
実 験 結 果 |
培養初期の細胞は球状であるが、15分程度の培養により細胞はカバーガラス面に接着し扁平な伸展状態へ形態を変化させる。標本には種々の細胞構造(核、核小体、仮足、細胞骨格、接着班など)が観察される。
|
細胞は基質状態(シャーレ底面)を認識し、自律的に細胞運動を行い、肉眼では「下絵」の形状を形成する。顕微鏡観察では個々の細胞が敷石を敷き詰めたように配列し上皮様の単層「細胞シート」が観察される。
|
細
胞
実
験
の
考
察
・
構
造
化
|
「実験とはともかく何かを確かめること:貴方は何が知りたい・確かめたい?:細胞をシャーレに入れたらどうなるか:なに・なぜ・どうして・どのようにして・それ本当?」による取り組みである。1)動物細胞の基本的性質「a.膜系構造体、b.足場依存性、c.細胞シートの形成」について「材料・方法・結果」に基づき考察する。2)細胞培養3要素+α(図1-5参照)に基づき生体組織細胞との類似性を協議する。つまり、実験学習の構造化(考察・展開)には細胞実験学習の大局「細胞培養実験に基づく動物体の成り立ちの理解」を意識する(「木を見て森を見ず」に陥らないように配慮する)。 |
細胞はECMなど外部環境に依存し自律的に運動(接着伸展)する。つまり、細胞の形態変化は外部情報に依存したシグナル伝達の結果であり、「細胞接着・細胞骨格・細胞構造」などが関連する。本実験では培養時間の長短(あるいは培養温度)により形態変化を評価し、構造化にはその仕組みなどを取り上げる。 |
基本単位「細胞」と生体主要成分(構造蛋白のコラーゲン、液性蛋白の血清アルブミン、生体元素Ca)を材料に得られる「細胞シート」は、動物体の成り立ちの理解に不可欠な基本概念である。本実験では、材料・方法・結果の意味意義を「生体との類似性」から考察する(付録1参照)。また対照実験の考案・考察などから「考える学習」に取り組む。 |
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3. 細胞実験学習の特色と展開法
実験学習「細胞培養実験」の特色はその場の学習者の視点を否応なしに収束させること。体構造の要(かなめ)「細胞」の実験学習はその観察・考察・協議を通じて自ずと多様な学習項目・領域へ展開される・橋渡しをすることにある。
つまり、学習の場における細胞培養実験には常に多くの疑問「なに・なぜ・どうして・どのようにして:それ本当?」が付随するが、その実験学習の意味意義とは「命題・材料・方法・結果」に関わる断片的な知識が、その疑問などを通じて自ずと生体細胞や組織との類似性・相関性に置き換わること。体の成り立ちを実験的に細胞レベルから多面的に俯瞰・考察することにある。繰り返しとなるが、細胞のみならず個体生物学全般にわたる発展展開が可能となることに細胞実験学習の意味意義はある(付録2を参照)。いわゆる「知識と知識をつなぐ知識を教える教育:ロジカルシンキング トレーニング」(文献4)の具現化である。
具体的には下記(図1とその解説)に示すような実験学習(図1の〔1-5〕)とその発展展開(図1の〔A-D〕)が基本と考える。つまりマクロからミクロに渡る多様な学習項目(座学)が細胞実験学習に基づき可能となる。その学習展開は実験学習の場の時々に生じた様々な「命題・疑問・質問」に基づき実践学習の場の話し合い(学習課題)として展開され「考える学習」を可能とする。あるいは学習の場が共有した現象や考察課題に対する体系的な学習として時を改めその学理を解き明かす・考察する発展学習となる。その事例は「細胞実験学習における協議事項一覧」として「付録2」に付記した。
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図1. 細胞実験学習とその発展展開:命題・経過・考察と発展学習(解説は下記)。
細胞実験は工程区分に応じて段階的に進められるが、その時々に応じて、更に結果考察やその発展展開として、各種の学習項目が成り立つ。下図イメージ(細胞実験については1から5,その発展展開は AからD)の解説は下記を参照。なお、付録2には具体的な協議事項を列記した。
下図それぞれの左上の数字・英字をクリックすると各図の解説へ移動する
(図を拡大表示の時はココ文字をクリック)
細胞培養実験学習の意味意義を考える:その原理解説はココをクリック
|
マクロ域 |
基本単位「細胞」実験 |
ミクロ域 |
命
題
・
課
題
|
〔A〕 図をクリック |
〔1〕 図をクリック |
〔B〕 図をクリック |
体の中身の描き方:描いた線や形とは何?(動物生理の基本:2系6要素) |
1,2,3粒の細胞をシャーレに入れたらどうなるか?:細胞実験の必要性 |
細胞構造の描き方:膜系構造体「細胞」の形態の基本 |
経
過
・
結
果
|
〔3〕 図をクリック |
〔2〕 図をクリック |
〔4〕 図をクリック |
Exp1. CG培養:細胞形態の観察 |
細胞培養・培養細胞・3層構造 |
Exp2. お絵描き実験:細胞シート |
考
察
・
展
開
|
〔C〕 図をクリック |
〔5〕 図をクリック |
〔D〕 図をクリック |
細胞シートはどこ?
: Web組織観察 |
細胞培養3要素
と生体との類似性 |
細胞自身は何しているか?
(細胞生理の基本) |
|
総論1.
個体生物学の枠組み
<形の根拠> |
総論2.
細胞生物学
<実体と概念の連立> |
総論3.
分子生物学
<考察視点の自己相似性> |
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図1の解説(細胞実験学習とその発展展開)
〔1〕実験学習(1) 細胞をシャーレに入れたらどうなるか(細胞実験の必要性)。
体の基本単位「細胞」を扱う細胞培養実験の特徴は、細胞が生きるに必要な条件や環境を段階的に整え、自律的な活動時間に沿ってその運動・行動・様態を評価すること。どのように(して)生きているかを見定めること。つまり「生きている細胞をシャーレに入れたらどうなるか?」という疑問(命題)は「細胞の基本的性質」の理解を容易にする。その結果は平易な視点・至極簡単な実験であっても「体の成り立ち」に対する根幹的な視座視点を与えてくれる。論より証拠・試してみよう、されどロジックも必要の実体験である。それで単位「細胞」実験は生物学習に不可欠である。ではその方法は? 〔図1に戻る〕
〔2〕実験学習(2) 細胞培養・培養細胞・細胞培養3層構造(細胞実験の前提)。
培養細胞とは生体組織から分離され人為的に維持管理される細胞のこと。細胞培養とは生体組織の微小環境をシャーレ等に再現すること。その様態は細胞培養3層構造(気相・液相・固相)として構成される。その細胞は培養時間(自律的な活動時間)に従い固相上で様態を変化させ、その結果は細胞の基本的な性質を顕示する。つまり細胞培養実験の方法・経過・結果とは生体との類似性から考察すべき対象である。では実際に実験(Exp.1, Exp.2)で確かめてみよう。実験とはともかく何かを確かめること:どんな疑問が生まれるか、細胞の基本的性質とはどのようなことか。 〔図1に戻る〕
〔3〕実験学習(3) Exp1.カバーガラス(CG)培養実験(細胞形態と運動性の観察)。
培養3層構造の固相(培養面)には細胞接着に適した物質が用いられる。その接着基質(ECM)と細胞膜表面の結合部(インテグリン)との接触反応は細胞運動の開始シグナルとなる。つまり、細胞は基質を選択・結合し、その情報は細胞骨格系へ伝達され、形態変化・運動へと展開する。細胞-細胞間反応も付加されたその様態は規則性を示す。その経過は、接着・伸展、移動・配列、(分裂増殖・接触阻害・増殖停止)である。はじめの一歩の細胞実験(Exp1)ではカバーガラスを接着基質とし迅速簡便な実技操作で細胞形態や運動性を確認する。その標本観察像には「構造」がある。低倍率から高倍率へ:さてどう表現しよう。 〔図1に戻る〕
〔4〕実験学習(4) Exp2.お絵描き実験(形の根拠と細胞シートの確認)。
お絵描き実験では、細胞をシャーレに加え放置すると形(単層細胞シート)が現れる。足場依存性を示す単位「細胞」は、点・面・立体という「形の根拠」に対応した仕組みから成る構造物(生物進化の成果物)であるこが判明し、細胞の基本的な性質「a.膜系構造体、b.足場依存性、c.細胞シートの形成」の理解となる。更に、隙間があったらどうなるの(分裂増殖)、詰まった状態で増殖したらどうなるか(接触阻害とガン形成)など、お絵描き実験の経験値は多様な分子生物学の視座視点へ平易な視点・観点からたどり着く。 〔図1に戻る〕
〔5〕実験学習(5) 細胞培養3要素と生体との類似性(細胞生物学への導入)。
培養細胞が生きるに必要な条件とは、細胞培養3要素(接着基質・基礎培地・必須添加物)+α(温度・pH・無菌性など)。それぞれはなぜ必要かをその成分から考える。その具体性は複雑であるが、その枠組みを平易な視点「生体との類似性」から扱えば誰もが見聞きする普通の話。生理生化学:物質代謝・生理機能への導入としてイメージ化される。詳細を構造(要素の配置とその繋がり)として扱えば、教科書学習の大半を網羅する。細胞培養実験の必要性はここにも生じる。複雑なことには平素の視点(共有命題)が必要である。
3要素や細胞培養と生体組織細胞の類似性については「ココ」で参照。 〔図1に戻る〕
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〔A〕発展展開(1) 体の中身の描き方(線や形は何?):動物生理の基本(2系6要素+α)。
細胞培養実験が「木を見て森を見ず」の状態にあってはいけない。それで体構造の側面俯瞰図(概念図:体の中身の描き方)が必要となる。つまり、「その形:描いた線は何?」に基づき「気相・液相に面する境界とは細胞シート:上皮組織」という平易な見解に結びつく。描いた器官臓器は更に器官系区分「動物生理の基本・2系6要素:役割)へと発展する。この道筋は「細胞形態とその働き」へも展開される。「描き・見て・考える」によるこれらの連続性は個体生物学を学ぶに必要な基本となる。 〔図1に戻る〕(実践は別シートへ移動:ココ)
〔B〕発展展開(2) 細胞構造の描き方:膜系構造体「細胞」の形態の基本。
細胞の実験観察を行えば、その学習「形態と機能」が表出される。形態とは「構造」であり、構造とは「要素の配置と?がり」に従えば、その要素「細胞小器官」の配置も自ずと概念化される。細胞実験は「足場依存性」を拠り所とするが、細胞形態の概念化にはこの観点が側面俯瞰図として反映する。細胞小器官を機能装置としてイメージ化すれば、教科書学習の多様な生理機能の項目のはじめとなる。細胞自身は何をしている?:細胞生理の基本の学習へと発展する。 〔図1に戻る〕(実践は別シートへ移動:ココ)
〔C〕発展展開(3) 細胞シートは体のどこにある?:バーチャル顕微鏡による組織観察。
細胞実験による「足場依存性と細胞シート」の検証は動物体「魚類のマクロ組織観察」に委ねられる。上皮組織はどこ?(描いた線は何?)であり、Webバーチャル顕微鏡観察は「時・人・場所」を選ばずその実体の共有化を可能とする。気相・液相に面する壁面は「上皮組織:オモテ側の細胞層」が判明し、その経緯から「ウラ側には何がある?」が生じる。その展開は「4大組織とその由来(個体発生)」へと繋がる。つまり実体と概念の連立連携は学習プロセスに実体感を与える。 〔図1に戻る〕(実践は別シートへ移動:ココ or ココ)
〔D〕発展展開(4) 細胞自身は何をしているか?:細胞生理の基本。
細胞の分子生物学(The Cell) は世界的教科書。これ抜きに生物学は語れない。その主要な観点は「細胞の働きと仕組み:細胞生理の基本」。これを平易に扱えば個体レベルのロジック「2系6要素:動物生理の基本」の導入となる。つまり、生きている構造体に与えられた「働き・役割」の「考察の視点の自己相似性」が成り立つ。構造とは「要素の配置と?がり」という平易な視点は分子レベルの学習においても重要であり、個体生物学の「学習マトリックス」がその道筋を示す。 〔図1に戻る〕(実践は別シートへ移動:ココ)
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4. 学習内容の構造化:その論理と学習マトリックス
我々が認知する物事・対象には常に複数の視点が混在する(図2-A)。例えば、ある「現象・状況」には「実体・実在」があり、それらは「本質・原型」から考察される。また、それらはその対応関係において「役割・働き」、「機能・仕組み」、「性質・物性」の配置から補完されると考える(私論)。異論や例外も生じる物事の見方「現実実体の枠組み」ではあるが、マクロからミクロへ、また科学と技術の観点から、それらの配置と繋がりは「考察の前提・視座の共有」として常用可能な枠組みと考える。
なお、既出「一筋縄には進まない」という状況は、生物教育に限らず学習対象(項目)には常に複数の視点が混在するためであり、特に生物学習では甚だしく、あるいは学習項目に対する当事者のイメージ(直感的な印象)とその場の学習方針(視点)との繋がりが不明確なためかもしれない。
そこで本編では細胞実験学習に基づく発展展開(前節)の構造化のため、その「現実実体の枠組み」を前提としながらも、以下に試論として構成した「学習マトリックス」(図2-C,-D)に視座視点(考察の枠組み)を置く(文献1)。それらは実践学習の場において共有可能な「考察の指針」であり常用可能な「話し合いの道筋」となるはずである。その「3軸構成の学習マトリックス」の論理(根拠)は動物体に与えられた古典的ロジック(知ってお得な多くが認める考え方)の再考に基づき作出したものである。
なお、それらは教師と生徒との「自律的な話し合いの場」を支援する枠組み・共有命題でもあり、平素な視点・実験学習に基づく学習内容の構造化に向けた試みである。必ずしも解答(断片的な知識)を求めるものではない。
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<現実実体の枠組み>
|
A1. 現象・状況 |
A2. 実体・実在 |
A3. 本質・原型 |
例1 |
空はなぜ青いのか?(気持ちが晴れ晴れするから!) |
大気成分と太陽光(7色)がある。光を識別する眼がある。 |
光は7色波動性。波長に合う物質は光を散乱/吸収する。 |
例2 |
体の中には何がある?(話は複雑、試験にはでないよ、大学で学んでね!) |
体は構造レベル(階層性)で構成され、その3大要素は個体・細胞・分子。 |
体は細胞と細胞間物質から出来ている。全ては細胞に由来する。 |
|
B1. 役割・働き |
B2. 機能・仕組み |
B3. 性質・物性 |
例1 |
光関連の現象:色彩、光合成、熱生産、物質循環などが生じる。 |
大気成分での短波長「青」の散乱率は「赤」の10倍(レイリー散乱)。 |
波長(RBG)は650, 530, 460nm。色覚はフォトプシン依存。 |
例2 |
気相液相の境界は上皮組織その裏側には結合・筋があり、働きは動物生理の基本「2系6要素+α」となる。 |
形の根拠「点・面・立体、オモテ・ウラ側」を提供し、発生経過では「3胚葉、4大組織」として機能する。 |
細胞の基本的性質は「膜系構造体、足場依存性、細胞シートの形成」。加えて「継承性」を示す。 |
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図2. 個体生物学の視座視点と学習マトリックス(詳細は別サイト:ココ)
<視座1. 体構造の基本>
つまり、動物体(個体)は構造体であり「構造とは要素の配置とその繋がり」という必然的・基本的な視点に従った場合、学習対象とする項目(あるいは細胞実験学習に起因する疑問・考察項目)には第1の視座(主軸):体構造の基本(構造レベル階層性9区分)が配置される(図2-C,D)。なお、動物体の構成要素とは一義的にはその階層レベル下位の集合体であり、また上位により限定されるため、その成り立ちに対し直裁的な判断を可能とする。その導入法は付録3に「階層性・視座視点一覧」として表記した。それらは動物体の見方・考え方の事例(典型)を提供すると考える。
補足1:生物教育では「模式図」が多用され「イメージ図」のような扱いとなることも少なくないが、本来は概念図(構造図)である。従って「構造:要素の配置と繋がり」という前提に従えば、その模式図の解説(学習理解の筋道)は明確になる。例えば「細胞の構造」の理解などはこれまでと異なった学習形式で展開されると考える。考えるに適した学習者に対して断片的な知識のみの提供は通常ありえない。本編の基本的な方針もこの「構造:要素の配置と繋がり」という平素な見方・考え方に根拠を置く。
<視座2. 考察の基本>
更に、その学習対象(項目)は通常「形・役割・由来・仕組み」、専門的には解剖組織学・生理生化学・発生遺伝学(図2-B)として扱われることから、上記4項目は考察の視点の基本である。但し「形・形態」は実体実在としての重要性から「部位・形状・名称・?がり・区分(構成)」で補完され「考察の基本:視点9項目」が成り立つと考える。すなわち第2の視座(副軸)が配置される。例えば、表2のような取り扱いが可能となり、学習課題には複数且つ特定の視点がその考察に必要であることが判明する。つまりそれらは断片的な知識確認に向けた方策ではなく、自主的に不明な観点や視点を探り出し、独自に考え続ける姿勢への支援策としてその役割を果たすと考える。すなわち「課題考察型学習」の典型として有効であろう。
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表2. 考察の視点の基本(事例)
学習項目やその要素は構造レベル階層性9区分〔個体・器官系・器官・組織・細胞・細胞小器官・巨大分子・分子・元素〕のいずれかに所属するが、その考察には左欄9項目を適用する。その具体性、不明瞭な事項、疑問の顕在化が図られる。 |
考察の
基本 |
事例:消化器系 |
事例:DNA |
1 |
部位 |
消化器系は 「どこ」にあるか? |
DNAは 「どこ」にあるのか? |
2 |
形状 |
消化器系とは 「どんな形」か? |
DNAとは 「どんな形」か? |
3 |
名称 |
なぜ、そんな「名前」なのか? |
なぜ、そんな「名前」なのか? |
4 |
繋がり |
消化器系はどこに「繋がって」るのか? |
DNAは どこに「繋がって」いるのか? |
5 |
区分 |
消化器系はどんな「部品」でできている? |
DNAは どんな「部品」でできている? |
6 |
役割 |
消化器系はどんな「役割」を持つのか? |
DNAは どんな「役割」を持つのか? |
7 |
仕組み |
消化器系はどんな「仕組み」で働くのか? |
DNAは どんな「仕組み」で働くのか? |
8 |
由来 |
消化系はどのようにして「できてくる」? |
DNAは どのようにして「できてくる」? |
9 |
他 |
消化器系に類似な物には何があるか? |
DNAに類似な物には何があるのか? |
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<視座3. 役割の補完>
生物学習の基本的な視点は上述のように「形・役割・由来・仕組み」であるが、その「役割」は常に重要な学習課題であることから、試論として構成した「学習マトリックス」には、その補完として第3の視座「役割の補完」を設定する。これには古典的なロジック「動物生理の基本:2系6要素・器官系11区分」を導入する(器官系区分の意味意義・配置が自ずと論理的に理解される:下記補足を参照)。
なお、この観点「動物生理の基本」は、階層「細胞」下位のいわゆる分子レベルの学習「細胞生理(機能)の基本:細胞自身は何をしているか」においても有効であり、その基本的な解説・考察法を与える。例えば、表3に表記するような取り扱いが可能となる。すなわち「考察の視点の自己相似性」が成り立つ。
補足「動物生理の基本:2系6要素・器官系11区分」について(文献5):基本的に動物体には体性系・臓性系(背側・腹側による俯瞰要素)があり、それぞれはその役割として「受容・伝達・実施」、「吸収・運搬・排出」の順列から担当すると考える。この2系6要素に対応させた器官系区分は従って「体性器官系:感覚、神経、筋・骨格」、「臓性器官系:消化・呼吸、循環、泌尿・生殖」の順列となる。加えて「外皮」と「内分泌」が配置されるという古典的な考え方(ロジック)に従うものである。従って、器官系区分は左記に基づき配置表(図1-D, 表3)として概念化される(暗記ものではない)。またこの観点から動物体(体内構造:器官・器官系)を概念化すると「側面俯瞰図」が作出される(図1-A)。但し、現行の教科書や副教科書(図説集など)にこれらの概念を見つけることは困難であり、またこの考え方(学理)を理解している生物教師は意外に少ないことも事実である。
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表3. 細胞生理の基本(細胞機能)の考え方
動物生理の基本(器官系区分)と細胞生理の基本(細胞機能)との考察の視点の自己相似性
(器官系の役割を細胞機能に対応させ読み替え・考察により細胞生理の基本が判明する) |
2系6要素+α |
器官系 |
細胞の働き/機能
(器官系の役割との対応) |
細胞機能
(装置・系) |
キーワード |
|
境界 |
外皮 |
細胞は姿/形を現している |
境界膜系 |
脂質2重層、多機能性 |
体
性
系 |
受容 |
感覚 |
細胞外から情報を受けている |
膜受容体系 |
膜受容体(レセプター) |
伝達 |
神経 |
その情報を内部に伝えている |
情報伝達系 |
受容体,リン酸化, 2nd伝令 |
実施 |
筋 |
動いている/運動している |
細胞運動系 |
細胞接着因子、アクチン/微小管/中間径線維、など |
骨格 |
細胞構造を支えている |
細胞骨格系 |
臓
性
系 |
吸収 |
消化 |
細胞は物質を取り入れている |
膜輸送系 |
能動/受動/共同/浸透,通路 |
呼吸 |
呼吸:ATPを作り出している |
内呼吸系 |
解糖/TCA/電子伝達,ATP |
運搬 |
循環 |
必要な成分を運用している |
物質代謝系 |
糖,アミノ酸,脂質,核酸 |
排出 |
泌尿 |
蛋白質などを輸送している |
分泌分解系 |
修飾/分泌/分解/輸送 |
生殖 |
自己複製(分裂増殖)している |
分裂増殖系 |
DNA複製、細胞周期、ガン |
|
調整 |
内分泌 |
情報の具体化を図っている |
統合指令系 |
遺伝子発現、エピゲノム |
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以上から成り立つ「3軸構成の学習マトリックス(図2)」は生物学習の基本(最小必須要素)と考える。学習者においては「独自に考える力の基盤」であり、実践学習の場には「課題考察型学習」の足場を提供すると考える。視座視点の枠組みの共有が希薄な生物学習の場による「課題解決型学習」の取り組みには本「学習マトリックス」の導入が有効であろう。
補足1.現行の高校生物学習では前述(1節)の通りその基本となる「階層性、考察の基本、動物生理の基本(器官系区分の意味意義の解説)」自体が学習対象として不明瞭であること、または学習概論として取り上げていないことから、その必要性に関わる論議は本編「学習マトリックス」に基づき広範な議論の場に委ねられると考える。
補足2.大学新入生(1節の該当者)に学習マトリックスの構成概論を行った場合、学生は当然のごとくそのロジックを理解する。その後、器官系区分や階層性について「中学・高校・大学のどの修学期で扱うべきか」を問うとその大多数は躊躇することなく中学あるいは高校と回答する。大学とする者の理由は「試験(受験)勉強で忙しいからロジックは大学入学後に」という素直な回答を得る 。
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5. おわりに: 細胞実験学習の展望
現行の生物学習の扱いは「その場その時その課題」として任意に扱われるが、学習者主体の学習の場には一貫した「考察の道筋」も必要ではないかと考える。考えるに適した学齢期の受講者に自明の理「This is a pen.」に終始するようなことは一般にはありえない。ロジックが希薄な状況において「課題解決型」の取組みは混乱を招くかもしれない。それでそのため、本編ではその起点となる細胞培養実験の必要性とその学習展開法、更にその論理「学習マトリックス」を新たに提案した。その細胞実験学習(培養細胞実験)とその学習展開はいわゆる「論より証拠、されどロジックも必要」の実体験(経験値)であり、学習者が納得する生物学習の「見方・考え方・進め方」を具体的に提供すると考える。
その実効性は、例えば、階層性に関わる共有命題などに基づく「文脈ベース・プロセス重視の模式図(概念図・構造図)の解説」を通じて可能となり、個体生物学の概論(総論)としてその効果を示す(文献4)。つまりいわゆる「基本の理解」となる。その結果、その詳細いわゆる各論となる学習項目は、学理領域3区分に基づく任意の選択課題(演習課題)としての取り扱いが可能となる。従って、総論・各論の2段階の構成は受講者の学習状況に応じた生物学習(個体生物学)の重層深度化(掘り下げ考える)を可能とすると考える(課題考察型学習の導入)。また、知識偏重に陥らないためにも学習内容到達度の再確認法として利用が可能であろう。更に、一般名称・様態名称・実体名称・人称名称・略号名称などが重複混在する生物学習用語の系群化に一定の基準・枠組みを与えると考えられる。
繰り返しとなるが、新たな生物学習内容構成論「考える生物学」の具体化に向けた方向性も必要であろう。つまり、教科書を根拠としながらも必ずしも教科書に依らない学習展開も本編の理解から実効的かつ具体的に可能となると考える。
なお、体の基本単位「細胞」学習の補完には、動物体(実体)に見る「細胞」の様態観察、繰り返しとなるが「実体と概念の連立連携」が必要である。つまり一義的には動物組織の理解であり、その取り扱いには従って「組織染色標本の顕微鏡観察」を必要とするが、現状では学習者に適した「組織染色標本」が不足していることにも事実である。その状況は高校生物における「動物組織」の取扱いにも反映し極めて希薄な学習状況にある。いわゆる「用語項目箇条書き:暗記もの」の回避のためと考えられるが、「動物組織の理解」は生物系のロジカルシンキングの典型でもあり、また個体発生・形態形成とも深く関連するため、今やUp-To-Dateな基幹的な位置付けにもあると考えられる。
本編ではその対応としてインターネット地図のように拡大縮小が自在に可能な「魚類マクロ組織のバーチャル顕微鏡観察Webシステム:」(図2-C)の製作などからその実践的な利用が可能であることを付記した(公開している)。生徒と教師との自発的・自律的な話し合いの場は顕微鏡観察を基本としながらも、現実にはインターネットを利用したバーチャル顕微鏡観察が可能となったことは、「時・人・場所」を選ばず同一素材によるフェアな学習教材の提供を可能とするものである。その導入法・考察法も「組織観察の前提20条」として公開した状況にある(文献1)。
つまり、これまで困難とされてきた二つ主要な実験学習教材「細胞」と「組織」、並びにその学習展開法が本編により確立したことは本邦の生物教育の本質的な弱点の解消に寄与すると考える。
再生医科学の目覚ましい進展は身近な実情となり、短期間でのiPS細胞に基づくそれらの展開は本邦の優れた成果としてその意義は極めて大きい。その社会現象化は教育実践の場へも波及すると考えられ、その基礎教育の必要性も明らかになるであろう。その結果として生物学・生命科学が「木を見て森を見ず」の状態にあってはならない。考えるに適した・考えるを欲する学齢期の就学者のためには「フェアな且つロジカルな学習フィールドの整備」が必要である。本編に基づく日本語による学習理論の再構築も可能ではないだろうか。
最後に、生物担当教諭らの前向きな自主研鑽は本邦の生物教育の基盤を成すものであり、知識確認に優れたインターネット学習などの実質化が進められる状況に平行して、生物教師、特に若手の方への実効的・実質的な支援システム・施策は更に必要であろう。
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謝 辞
本編の細胞実験学習に関わる実証試験(細胞実験キットによる授業実験)やその学習展開に関わる基本的な評価は多くの方の協力によりなされた。特に下記の方々のご支援とご協力に深く敬意を表しています。記して謝辞とします。 (いつもありがとう、本当に心から感謝しています、今後も「フェア」のため一緒に進みましょう、お願いします:はそべ)
皆川敬志 先生(新潟県立新潟江南高校)、中川優子 先生(聖ドミニコ学園中高学校)、宮崎千種 先生(愛知県立旭丘高校)、伊藤泰二 先生(三重県立四日市高校)、野村浩一郎 先生(神奈川県立柏陽高校)、高木常昭 先生(神奈川県立海洋科学高校)、菅野治虫 先生(埼玉県立浦和高校)、原由泰 先生(埼玉県立熊谷西高校)、根本均 先生(埼玉県立流山高校)、白石直樹 先生(東京都立淵江高等学校、生物教育会事務局長)、山藤旅聞 先生(東京都立両国高校)、井関和明 先生(福島県立安積黎明高校)、小野栄子 先生(愛媛県立松山東高校)、川上雅弘 先生(大阪教育大学科学教育センター)、田代直幸 先生(常葉大学)、鳩貝太郎 先生(秀明大学)
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付録1. 実験教材「細胞培養実験」の特色と実践導入の留意点(2節に対応)
1. 細胞培養実験の特徴は細胞の生育に必要な環境や条件(例えば、細胞培養3要素+α)を整え、自律的な細胞活動を制御・保全しながら所定の実験課題を調査・検証すること。
補足:培養細胞とは生体組織から摘出・分離され人為的に維持管理される細胞のこと。細胞培養とは生体組織細胞の存在様式(微小環境)を培養容器などに再現すること。一般的な培養細胞が生きるに必要な要素・条件とは「接着基質、基礎培地、機能発現因子」の充足であり、加えて、培養温度、無菌性、継代管理などを必要とする。この「細胞培養3要素+α」は生体組織細胞との類似性から考察することが可能である(考察すべき対象である)。
2. その状況や効果は細胞の形態・様態・その変化(細胞運動と社会性)などとして観察・評価される。
補足:細胞培養という用語は従来から「組織培養」という用語で代替・併用されるが、その意味は多細胞動物の培養細胞が結果的には細胞の社会性に基づく細胞集団としてその性質を示すためであり、生体組織に類似した様態を示すためである。例えば、動物細胞の基本的な性質「足場依存性と細胞シートの形成」が再現されることなどに基づく考え方である。
3. その実験方法は培養容器に向けた一連の工程操作から構成され、各工程の意味意義に沿った細胞培養技術(特定の手技手法)により段階的に進められる。
補足:無菌性を旨とした通常の細胞培養技術はかなり専門的(機器・器具・操作の特殊性)、また数多くの消耗品を必要するが、細胞実験キットにより実施される本編記載の細胞培養実験はそれらを必要とせず、通常実験室、通常の器具・一般的な操作での対応を可能とする。
4. 体の基本単位「細胞」を扱う細胞実験学習の意味意義は下記「補足」に記すところであり、その細胞実験に基づき発展展開が可能な学習課題に限りはないが、実践学習の場に適当な事例は「図1」に示すような課題がその基本と考える。
補足:実験学習としての細胞培養実験には常に多くの疑問「なに・なぜ・どうして・どのようにして:それ本当?」が付随するが、細胞実験学習の意味意義とはつまり「命題・材料・方法・結果」に関わる断片的な知識が、その「なぜ」などを通じて生体細胞や組織との類似性・相関性に置き換わることにある。体の成り立ちを実験的に細胞レベルから俯瞰・考察することである。
5. つまり細胞実験学習の意味意義とは、手技手法に終始する学習者学習の場が自発的な疑問とその解説協議を通じて自ずと個体生物学を俯瞰する視座視点に至ることである。
補足:基本単位「細胞」を理解しようという姿勢は必然的に体の成り立ちの理解へと向かう。その解説や協議はいわゆる「知識と知識をつなぐ知識を学ぶ学習:ロジカルシンキング」の典型となる。
6. なお就学者を対象とする実験学習(実技実験)ではプロセス重視の観点が必要であり、実践的には断続的に進行する「工程区分の積み重ね」の様式で実施される。
補足:細胞培養実験には通常「培養時間」が含まれる。これは細胞の自律的な活動時間として重要であるが実施者においては「待ち時間」でもある。従って、その間を利用した解説・考察や協議は実験学習の構造化や質的向上のために重要である。
7. 従って各実技工程を開始する直前には受講者に向けた具体的なデモンストレーションや要点解説が不可欠であり、学習時間に制限のある実践学習の場では担当者による実施計画の立案とタイムスケジュールの検証(シミュレーション)は、各種の事前準備と同様に特に重要な課題となる。
補足:細胞実験学習の役割を上記「4」の観点から捉えれば、実施担当者や受講者代表による実演実験(演示実験)という形式もその意味意義に対応する。時間的な制約がある場合や授業計画が複雑になりそうな折には従ってこの観点を導入し余裕ある実験学習の立案を図る。なお、実験考察・協議に力点を置くいわゆる「考える学習」にはこの様式「実演実験学習法」は効果的である。実験とはともかく何かを確かめる事:実験学習が実技操作にのみ固執するは適当ではない。
8. つまり、細胞実験学習を担当する場合の要点とは、余裕あるタイムスケジュールに基づき、実験工程を段階的に丁寧に進め、その結果として所定の課題実験が完了する、という姿勢である。
補足:受講者多数の計画立案では予想以上のタイトスケジュールが判明することも少なくない。その場合は無理が生じないように配慮・修正すべきである。また「培養細胞は生きている」という当然の認識や配慮は大変重要である。つまり、培養細胞は常に物質代謝や分裂増殖を繰り返している。そのため所定の実験に適した細胞密度や細胞状態を示す期間は数日程度とかなり短い。従って、授業実験を予定する場合は諸事情も考慮しながら十分な計画性に基づき実施日を確定する。「簡単に実施可能」という思惑は不測の事態につながる。
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付録2. 細胞実験学習における協議事項(3節に対応)
図1あるいは付録1の[4]に記したように細胞実験学習には個体生物学全般に関わる多様な視点観点が含まれる。下記は本編の細胞実験の時々あるいは時を改め利用可能な「協議事項」の一覧である。それらは必ずしも答えを求めるものではなく細胞実験に基づく考える筋道であり、状況に応じて任意に扱われる事項と考える。
<A. 細胞培養実験の前提>
- 培養細胞・細胞培養って何、培養細胞はどこに由来(起源)するか?
- 階層性って何、細胞は階層レベル(構造レベル)のどこに位置するか。その場合、どのような疑問が生じるでしょうか?
- 一般的な細胞培養の様態は「3層構造・細胞培養3要素+α」の充足:それぞれはどのような状態ですか。どのような物質・成分でしょうか。
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<B. 実験材料・生体物質について>
- 接着基質は細胞外基質(ECM)とも呼ばれます。この基質(M)はマトリックスであり色々な場面で使われますが、どのような意味合いでしょうか。
- ゼラチン・アルブミンについて知るところを上げてみよう。ゼラチン・アルブミンは体のどの部分にあるか、どのくらいあるか。物性の違いは?
- 骨からカルシウムを除いたらどんな「形」になるか・なぜなるか?
- 血液成分をツリー構造で表記してみよう(血清・血漿・血餅って何?)。
- 生体成分を次の用語から考えツリー構造で表記してみよう(細胞、細胞間物質、構造性物質、液性物質)。
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<C. 細胞・培養細胞について>
- 細胞は膜構造体であり浮遊状態の動物細胞は球状です。その理由は何でしょうか。
- 細胞表面(細胞膜)にはどのような構造(部品)があると思いますか?
- 動物細胞の大きさはどのくらいか。バクテリア、ウイルスの大きさは?
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<D. 細胞実験の経過・結果について>
- 培養時間は細胞自身にとってどのような意味役割があるか?
- 培養容器に入れた「はじめは球状の細胞」はその後自律的にその形態を変化させます。具体的にはどのような状況でどんな行動・様子を示しましたか。
- 伸展していない球状の細胞を無視し、底面に接着し伸展状態の細胞の「形」を幾つか描き、細胞と細胞集団が示す特徴を表現してみよう。
- お絵描き実験:なぜ「形」が現れたのか、材料と方法から考えてみよう。
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<E. 固定染色標本を通じて>
- 固定処理にはどのような効果があるか。ホルマリン(ホルムアルデヒド)が固定効果を示す仕組みとは?
- クリスタルバイオレット(CV)は塩基性色素である。では、細胞はどのようなところが濃く染まるか?
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<F. 結果考察>
- 培養時間に差があるExp1の観察結果を客観的・簡便に評価するにはどのような評価基準を使用すればよいでしょうか?
- お絵描き実験:顕微鏡観察した細胞・細胞集団はどんな様態を示していますか。また、その様態のメリットとはどのようなことでしょうか?
- 観察結果から動物細胞が示した主な特徴「基本的な性質」とは何?
- 実験とはともかく何かを確かめること。気になることを箇条書きにしてみよう。話し合ってその特徴をまとめてみよう。
- 実験方法や材料の性質を明らかにするためは「対照実験」や「発展実験」が必要である。新たな実験プラン(対照実験)を設計してみよう。
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<G. 総合考察>
- 「細胞説」や「構造」とはそれぞれどのような意味でしょうか?
- 細胞の基本構造を「構造:要素の配置とそのつながり」の観点から教科書を参照し模式図化してみましょう。また、その主な役割を考えてみよう。
- 基本単位「細胞」は、いわば「点」であり、それが集まると「面/細胞シート」になる。それが閉じれば「立体」になる。では、動物体の細胞はそのような様態/様子を示しているのだろうか。どう思う?
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<H. 細胞培養実験に基づく発展考察(1)>
- 「細胞培養3要素+α」を生体との類似性から考えてみよう。例えば、培養液にはどのような成分が含まれているか。なぜ必要か考えてみよう。
- 実験で確認した「細胞シート」と呼ばれる様態は動物体のどこにありますか。「組織学自主トレーニング」の腸管の画像で確かめてみよう(次の3も参照)。
- 我々は何もないところに対面する境界から「形」を認知します。では、体の形(器官・臓器)の表面には何がある。どのような用語で呼ばれますか。
- では、器官系の概要を「管状構造に基づく動物体の描き方:器官系の理解」として扱い「線や形」の状況を確認してみよう。
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<I. 細胞培養実験に基づく発展考察(2)>
- 器官系は11区分とされます。その順列・配置を「動物生理の基本:2系6要素」の観点から表記し話し合ってみよう。
- 細胞自身は何をしているか。細胞機能を上記「動物生理の基本:器官系11区分」との対応関係として「考察の視点の類似性」から考えてみましょう。
- 細胞は基本単位である。今日の実験からその必然性を述べなさい。
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<J. 細胞培養実験に基づく高度かつ重要な協議事項>
J-1.細胞に関連して
- 細菌(細胞)と動物細胞の培養技術は随分違います。技術とは対象の物性や性質の理解に基づき開発されます。では、左記の違いはどのような細胞の性質が関係するのでしょう。実験状況から考えてみましょう。
- 細胞の培養容器には広い空間(気層)があります。なぜでしょうか。また、細胞はその気層成分を何に使うのでしょうか?
- 等張ホルマリンで固定すると細胞の表面(細胞膜)に風船玉のような小さな膨出ができます。何故でしょう。等張液、等浸透状態、Na-Kポンプの観点から考察してみよう。
- Exp1と2では細胞の接着基質が異なります(カバーガラスとゼラチン)。同じ細胞でも接着伸展の開始時間はカバーガラスでは5分後くらい、天然型基質では約20分後と随分違います。なぜでしょうか。
- 細胞が示す「接着伸展の仕組み」を「構造」から考えてみましょう。用いる用語は、例えば、ECM、インテグリン、細胞接着、細胞骨格、アクチン線維、仮足、細胞運動、シグナル伝達、など。
- 細胞を培養すると自然に底面に接着伸展(運動)します。人工物と比較しその特徴を簡単に言い表すにはどのような表現が適していますか。
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J-2.組織と由来に関連して
- 「気相・液相・固相」は状態の基本3区分です。ではこの区分は動物体(構造)のどこにありますか。少し考えてみましょう。
- 動物体には「皮膚・表皮・真皮・上皮・中皮・内皮」など「皮」という用語が多用されます。皮は一般的には「大根や饅頭の皮:外界に面した部分」に使われます。では、左記6つの「皮」は動物体のどこにある構造でしょうか。下記3も参照し考えてみましょう・協議してみましょう。
- 動物体の気相・液相に面するところは「オモテ側の皮:細胞シート」です。では、その「ウラ側」には何があるでしょう。また、それぞれは組織区分で何と呼ばれますか。発生学的には何胚葉に由来しますか?
- ウラ側の「細胞」は約8区分と考えられます。では何が該当するでしょうか。由来(起源)も意識しながら考えてください。
- では、魚類マクロ組織のバーチャル顕微鏡観察を行い、気相・液相に面する「上皮組織:上皮・中皮・内皮」を確かめてみましょう。その時のコツとは?
- 動物体の腹部横断面を模式図として描いてみましょう。必要に応じて組織4区分や発生学的な由来(胚葉性)のことも考えてみよう。
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J-3.コラーゲンに関連して
- 実験ではコラーゲンの変性物「ゼラチン」を用いました。タンパク質の「変性」とはどのような状態・意味ですか。卵白を加熱するとなぜ白く見える?
- コラーゲンは海綿動物などにもある重要な細胞間物質ですが、進化において「多細胞動物化」に大きな影響を与えたと考えられています。つまり、コラーゲン合成の仕組みです。酸素やビタミンCなどが関係します。調べてみましょう(お肌美容も関係するかも)。
- 傷のため出血した皮膚でも短期間で治ります(損傷治癒)。この現象は止血反応でもあり、血管の基底膜(コラーゲン)、血小板、細胞接着(因子)などの用語が関係します。どのような仕組みと構造から成り立っていますか。
- 動物の体温(生育温度)とコラーゲンの変性温度は相関します。ヒト、南極の魚、冷水魚、温水魚について調べてみよう。体温計の上限は何℃?
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J-4.細胞周期に関連して
- 細胞シートは「敷石を敷き詰めた」ような状態(隣接する細胞同士が接触した状態)です。では、隙間のない細胞シートを継続して培養すると細胞はどのような行動をするでしょうか(下記2も参照)。
- 細胞シートに隙間があったら(できたら)、細胞はどのような行動をとるでしょうか、細胞周期から考えてみよう。また、それはなぜ必要でしょうか。
- 細胞の「基本的な性質」が希薄になると「ガン」と呼ばれる異常が生じます。では、どのような様子のことでしょうか。
- では、ガン遺伝子・ガン抑制遺伝子とはどのような遺伝子でしょうか。例えば、RB遺伝子について調べ、その違いを分かり易く説明してください。
- 英語の「遺伝」という用語には「継承」という意味が含まれます。では、生物系で継承される現象にはどのようなことが挙げられますか。遺伝って何?
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J-5.機能発現に関連して
- 単純な細胞培養技術では、培養細胞は平たい扁平状の形態を示しますが、体内では腸管の上皮細胞のように「円柱状」など、多様な形態で機能します。では例えば、腸上皮由来で単純培養のため扁平状態を示す細胞を、生体に類似した円柱状細胞にするにはどのような方法・技術を用いれば良いでしょうか。生体組織細胞の様態から考えてください。
- 個体は同一遺伝子を持つ数十兆もの細胞からできていると言われています。しかし、各器官・組織の細胞は異なった形態や役割を示します。同じ遺伝子を含む細胞が異なった形態や機能を示す「仕組み」で重要な点はどのようなことでしょうか。
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付録3. 動物体の構造レベル(階層性)に応じた視座視点一覧(4節に対応)
<動物体の構造レベル(階層性)とその見方 考え方 進め方:詳細は別サイト:ココ>
前提:体は1細胞を起源とし、全ての細胞と細胞間物質は細胞から生じる(細胞説) |
区分 |
命題 課題 その視点 |
その要素項目/構成/事例(キーワード) |
T |
個体 |
A.共有命題「サカナの縦縞・四肢・尻尾」を話し合う。
B.その課題「科学論・多様性と共通性・動物体の座標」を考える。 |
1 |
1次体型区分 |
体部位・体軸・体断面・体内腔・体節 |
2 |
2次体型区分 |
体壁性器官/体性系:背側、内臓性器官/臓性系:腹側 |
3 |
骨格系 |
骨パズル:頭部骨格、鰓弓系、肩帯/腰帯、 |
U |
器官
系 |
A.共有命題「ネコの前にサカナを置いたらどうなるか」を話し合う。
B.その課題「器官系区分と動物生理の基本」を考える。 |
4 |
動物生理の基本 |
2系6要素(受容-伝達-実施、吸収-運搬-排出) |
5 |
器官系統の区分 |
器官系11区分とその順列・配置・役割 |
V |
器官 |
A.共有命題「体の中身の描き方:描いた線や形とは何?」を話し合う。
B.その課題「体構造の側面俯瞰図と主要器官:体腔管腔その壁面」を考える。 |
6 |
器官と臓器 |
その所属(分類)・繋がり・役割 |
7 |
体腔管腔その壁面 |
細胞と細胞シート(上皮組織:上皮・中皮・内皮) |
8 |
体内構造の方向性 |
表面と裏側(オモテ側とウラ側)、その規則性 |
W |
組織 |
A.共有命題「体の薄切り2色で染めたらどうなるか」を話し合う。
B.その課題「4大組織(上皮・結合・筋・神経)とその由来」を考える |
9 |
組織区分とその要素 |
4大組織、細胞と基質と細胞間物質 |
10 |
所在の根拠 |
発生学的な由来(シート構造の変化と規則性) |
11 |
結合組織の考え方 |
中胚葉由来の細胞と物質 |
X |
細胞 |
A.共有命題「細胞をシャーレに入れたらどうなるか」を話し合う。
B.その課題「多様な細胞とその原型・細胞くんの描き方」を考える。 |
12 |
細胞構造の基本 |
膜系構造体、細胞の起源(共生進化) |
13 |
細胞の基本的性質 |
足場依存性と細胞シートの形成:点・面・立体 |
14 |
多様な細胞の考え方 |
形態と機能:細胞くんとパラニューロン、etc |
Y |
小器官 |
A.共有命題「細胞自身は何をしている」を話し合う。
B.その課題「細胞生理の基本:考える筋道・古典的ロジックの展開」を考える |
15 |
分類・構造・機能 |
機能装置としての理解 |
16 |
細胞生理の基本 |
考察の枠組み:2系6要素11器官系区分との対応 |
Z |
巨大
分子 |
A.共有命題「筋肉は何からできている」を話し合う。
B.その課題「生体高分子とは?:種類・形・役割・仕組み・由来」を考える。 |
17 |
筋構造とその階層性 |
構造と名称区分(様態名称と実体名称) |
18 |
巨大分子の種類 |
分泌性物質と内在性物質、構造と役割 |
19 |
遺伝の基本 |
セントラルドグマ(DNAから蛋白質)、高次構造 |
[ |
分子 |
A.共有命題「子牛が草を食べるとなぜ成長するか」を話し合う。
B.その課題「生体分子とは?:種類・形・役割・仕組み・由来」を考える。 |
20 |
種類と構造 |
糖・アミノ酸・脂質・核酸・補酵素・生体元素 |
21 |
物質の代謝と循環 |
糖代謝・窒素代謝・核酸代謝:起点と繋がり |
22 |
エネルギー変換 |
ATP合成、膜電位、補酵素の役割 |
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文 献
- 羽曽部正豪・吉村 成弘(2015) 個体生物学の新たな学習マトリックスとその関連学習コンテンツ:高校生物の学習内容構成論の構造化に向けて、日本科学教育学会 年会論文集39:127-130.
- 中川優子・羽曽部正豪(2015) 高校生物における「はじめの一歩の細胞培養実験」:その方法と効果、日本科学教育学会 年会論文集39:131-132.
- 羽曽部正豪・吉村 成弘(2014) 「卓越性の生物教育の実践」に向けた新たな動物細胞実験キットの導入とその論理的背景、日本科学教育学会年会論文集38:229-232.
- 羽曽部正豪(2013) 脊椎動物の構造をモデルした生物系のロジカルシンキング トレーニング.日本科学教育学会 年会論文集37:230-233.
- 羽曽部正豪・中川優子(2012) 卓越性を志向した論理性に基づく高校生物の実践に向けて.日本科学教育学会 年会論文集36:189-192.
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本編に関わるウェブ資料(公開済み)
本編で概説した内容はWeb資料として公開済みである。そのウェブ検索用語は「実演生物学」、そのTop Page記載の下線付き文字列「ギャラリー」から当該サブサイトにて参照が可能である。その多くは連続スライド形式での図説解説であり実践学習の場においても利用可能である。なお、それらウェブ資料の構成は、本編に関わる研究経緯(下記のような項目)から理解することもその便宜に沿うと考える(下記)。下記「下線文字列」はWeb検索用語でありその具体性は当該サイトにて参照が可能である(はず)。
- 本研究では、個体生物学に必要不可欠な実験教材「動物細胞実験キット」を、実践学習の場の付帯条件「迅速・簡便・確実・安全・安価:いつでもどこでも誰でも」の観点から開発し、「はじめの一歩の細胞実験」、「形態形成に関する基礎実験:お絵描き実験」としてシステム化した。その実効性は実践検証された。
- なお、本実験キットはこれまでに前例のない充実した細胞に基づく実験学習と各種の考察課題を内包することから、その具体的な実践導入法は以下のような構成とした。つまり、
- その実践形式(学習テーマ)は『基本単位「細胞」の実験学習に基づく動物体の成り立ちの理解:組織形成・形態形成に関する基礎実験』、そのベクトルは「細胞から個体へ」である。
- 本テーマに基づく学習形態は、各種の実験検証に加え関連する一連の考察課題(新規開発の学習コンテンツ「描き・見て・考える」の各項目)で補完した。学習ベクトルの構造化とレベル選択性を与えた。
- それらの論理性は「構造:要素の配置とその繋がり」の観点から、生物学習の基本「階層性:視座視点一覧」として連続的なコンテクスト化を図り公開した。以上の構成は、更に、
- 新規開発の学習内容構成論「個体生物学の学習マトリックス」(3軸構成の個体生物学)によりその論理的根拠を与え、また学習テキスト「生物系のロジカルシンキング トレーニング」として公開した。
- なお、個体レベルの補完(実験教材)には、「魚類マクロ組織染色標本」のインターネット「バーチャル顕微鏡観察」の開発と公開、マクロ組織の巨大ポスター化教材、更に「組織観察の前提20条」により、平素な対応が可能な形式とした。つまり、その学習ベクトルは「実体と概念の連立連携」として構成した。
- 更に、本編は「細胞」を起点とした実証的・課題考察型の基幹生物学であるが、その階層上位のロジックは下位(いわゆる分子レベル)においても有効である(描き見て考える:H1)。つまり、例えば世界的な教科書「細胞の分子生物学」の理解の必須前提としての役割も担う。従って、高校レベルに限定することなく大学レベルにおいても卓越した自主的自律的な自己研鑽の道筋を提供すると考える。グローバル スタンダードである。
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<付録4.実験学習の構造化:実践学習の場で用いる「話題・協議」の事例(イメージ)>
(下図の拡大像はココをクリックで連続スライドとして表示・参照)
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<以下に示す図は本文の挿入図とその補足:小画面をクリックすると拡大スライドになる>
(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.0 中 Fig.00 右 Fig.000)
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<1-3>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.1 中 Fig.2 右 Fig.3)
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<4-6>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.4 中 Fig.5 右 Fig.6 )
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<7-9>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.7 中 Fig.8 右 Fig.9 )
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<10-12>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.10 中 Fig.11 右 Fig.12)
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<13-15>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.13 中 Fig.14 右 Fig.15 )
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<16-18>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.16 中 Fig.17 右 Fig.18 )
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<19-21>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.19 中 Fig.20 右 Fig.21)
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<22-24>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.22 中 Fig.23 右 Fig.24 )
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<25-27>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.25 中 Fig.26 右 Fig.27)
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<28-30>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.28 中 Fig.29 右 Fig.30 )
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<31-33>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.31 中 Fig.32 右 Fig.33 )
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<34-36>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.34 中 Fig.35 右 Fig.36 )
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<37-39>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.37 中 Fig.38 右 Fig.39 )
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<40-42>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.40 中 Fig.41 右 Fig.42 )
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.43 中 Fig.44 右 Fig.45 )
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<46-48>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.46 中 Fig.47 右 Fig.48)
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<49-51>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.49 中 Fig.50 右 Fig.51)
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<52-54>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.52 中 Fig.53 右 Fig.54)
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.55 中 Fig.56 右 Fig.57)
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.58 中 Fig.59 右 Fig.60)
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