実演生物学:Ch2. -6A,:パラフィン切片HE染色標本(ニジマス稚魚)の作製法
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 <概要:用語解説
 <補足事項
 <脱水/パラフィン浸透工程の時間割
 <包埋法
 <マニュアル操作について
  模式図とボタン番号の関係



 本工程は下記の時間割に従い、自動脱水パラフィン浸透装置で行う。自動脱水パラフィン浸透装置がない場合には、マヨネーズ瓶などに系列液を作る(下記の補足を参照)。パラフィン溶融のためには、70℃設定の恒温槽を利用。

<概要:用語解説>

  1. 脱水:試料中の水分をEtOH系列(エチルアルコール系列)で徐々に除く。 Abs EtOHとは100%EtOHのこと。「モリキュラーシーブ 3A」などの吸水剤で脱水処理したエタノールのこと。
  2. 中間剤処理:パラフィンはEtOHに全く溶けないが、キシレンを介することで試料にパラフィンが浸透することから、中間剤としてキシレンを用いる。
  3. 溶融パラフィンの浸透処理:指定のパラフィンを使用する。約75℃設定の溶融パラフィンでキシレン処理試料(中間剤処理)をパラフィンに置換する。必要に応じて引圧処理20分による効果的なパラフィン浸透処理も行う。
  4. 包埋/ブロック作成:パラフィン置換試料を、包埋皿に注いだ溶融パラフィン中に埋め込み固化させ「パラフィンブロック」の標本とする(長期保存可能)。専用の包埋皿などもあるが、使い捨てのお醤油皿などで代替する。
  5. ブロックは整形(トリミング)し、ミクロトーム試料台に固定する台木に接着する。テキストを参照する。

<補足事項>

系列試薬の調製と補足
・エタノール系列の所定濃度液はポリプロピレン製のサンプルボトルなどに調製し保存しておくと便利。
・キシレンはガラス瓶に保存すること(密封)。


<脱水/パラフィン浸透工程(時間割)>   

処理・操作         処理時間     
脱水処理 (Dehydration)
 □0)70%EtOH(又は流水) 数時間(ブアン除去、なくても良い)
 □1)70%EtOH   1時間(又はそれ以上でも良い)
 □2)80%EtOH   1時間(又はそれ以上)
 □3)90%EtOH   1時間(又はそれ以上)
 □4)95%EtOH   1時間(又はそれ以上)
 □5)99.5%EtOH   1時間(又はそれ以上)
 □6)Abs.EtOH 1  1時間
 □7)Abs.EtOH 2  1時間
中間剤処理 (脱水試料にパラフィンを浸透させるために)
 □8)キシレン 1  1時間
 □9)キシレン 2  2時間
   (必要に応じて長くする、一晩放置してもOK)
パラフィン浸透処理 (Infiltration)
  パラフィン槽の温度は
    第1槽を約58℃、第2槽を約72℃、第3槽を約77℃に設定
     (全部を75℃位にしてもOK)。
 □10)パラフィン 1  1時間
 □11)パラフィン 2  1時間
 □12)パラフィン 3  1-2時間
 □12+α)減圧処理
   (可能なら行う:吸引減圧処理20分でパラフィン浸透)
   休まず、包埋(パラフィンブロックの作成)を行う。
包埋(Embedding:パラフィンブロックの調製)


<包埋法>
  1. パラフィン浸透処理をした試料は70℃前後であり、かなり暑い状態にあるが、室温のピンセットなどを使うとパラフィンがすぐ固化し操作が難しくなるので、包埋操作を行なう実験台は下記のような適切な操作環境を設置して行なう。
  2. 最終のパラフィン浸透槽のパラフィンを用いて包埋操作を行なう。試料とパラフィンのなじみがあるので、別途に調製したパラフィンを混入させるのはできるだけ避ける。または最終パラフィン槽は常に新品のパラフィンを用いる。
  3. パラフィン浸透が完了した試料は、加温し溶融状態を維持する。レフランプの光熱で器具を加温する。ピンセットはパラフィン糟に入れ加温保存する。大きなスプーン(かき氷のシロップ用)もパラフィン槽に入れ加温しておく。
  4. 溶融パラフィンをお醤油の使い捨て小皿(包埋皿)に充分注ぎ、時間を置かずに、ピンセットで試料を皿の底面へ沈める。
  5. 包埋皿の底面に試料を入れる時にはポジション(パラフィンブロックを作成する状況)を考え、試料を入れる。複数の時は「ブロックのトリミング」を考え隙間を充分に設定。失敗したら、溶融パラフィンに入れ試料を溶解後に再度、包埋操作を行なう。
  6. 試料がパラフィンに埋まるまで溶融パラフィンを更に加える。試料が充分に埋まるまでパラフィンを加える。
  7. すこし固まってきたら、小皿を入れたバットに氷水を加え、小皿パラフィンを速やかに冷やす。

<包埋操作>

 パラフィン浸透したサンプルの包埋には専用皿があるが、使い捨てのお弁当用醤油皿(大型)などを利用し、パラフィン包埋する。
 溶融パラフィンは室温ですぐ固化するので、レフランプ(発熱ランプ)の下などを作業スペースとして確保すると便利。溶融槽の試料を冷えたピンセットなどの摘むと、パラフィンが固化して作業が困難になるので、ピンセットなどは数本用意し、パラフィン槽につけおき、温めた状態で操作する。
 包埋作業では素早い操作が必要な面もあるが、失敗したら、もう一度、試料をパラフィン槽に戻し、丁寧に行なう。
 包埋皿に試料を並べる時には、ブロックにする時に必要な余白の事を考慮して並べる。
1)包埋皿に溶融パラフィンを入れ、パラフィンが冷え固まらないようできるだけ早く試料(サンプル)をお皿に入れる。その時、サンプルが中央に位置するよう、また切り易いような配置を考慮する。
2)サンプルがパラフィンからはみ出さないように考慮する。
3)包埋するとき、小紙片(薬包紙)にサンプル名等を鉛筆記入し、パラフィンブロックに張り付けておくと便利。完成したパラフィン包埋試料は長期保存可能(永久標本)。

<マニュアル操作について>

1)処理時間は下記に従う。マニュアル操作(自動機器を用いない)の時には、全工程が最短で約13時間なので、実質時間は早朝から深夜の操作になる。そこで、キシレンUの時間を長くすることも可能なので、キシレンTまでを夕方まで行い、キシレンUは夜に開始し、翌朝にパラフィン処理を開始する。午後にブロック作成。
2)下記の系列試薬を保存容器に調製する。パラフィンは70℃設定の恒温槽を利用し、マヨネーズビンや陶器壺(マグカップ)中に融解しておく。
3)通常実験室で、固定試料をマヨネーズビンに入れ、系列液を加える。15分おきに液をゆっくり揺する。処理時間終了後、液を完全に保存容器に回収し、再度、試料ビンに次の系列液を加える。操作を繰り返す。
4)キシレン2からパラフィン1に移し替えるときには、試料が乾かないように素早く溶融パラフィン槽に入れる。パラフィン浸透の時はできるだけ、頻繁に揺り動かし、浸透を助ける。マニュアル操作の時には時間を長めに取る方がよい。

<パラフィン溶融槽/電気パラフィンポットがない場合>

 自動脱水パラフィン浸透装置がない場合は、ガラス瓶などを用いて人為操作で行う。パラフィンには恒温槽とマグカップなどを用いる。本工程を行うためには自動脱水パラフィン浸透装置があると便利であるが、ない場合には蓋付きのガラス瓶(マヨネーズ瓶など)などに系列液を作る。パラフィン溶融のためには、70℃設定の恒温槽などを利用。
 安全性が確保できる温度調製が可能な恒温庫(オーブン)やホットプレートを利用する。
パラフィン浸透は3槽を用いるが各2時間で合計6時間と考え、昼間、状態を確認しながら行なえる状態で用いる。マニュアル操作の時は夜間のパラフィン溶融を行なわないようにする。

 

<図表一覧と対応パネルボタン>

 


<目次と移動ボタンの対応>
<パラフィン切片HE染色標本の作製法>
 A. 組織標本作製技法の概要と安全対策
 B. 一覧表:組織標本作製工程
 C. 主な試薬と備品、その調製法
 D. 実技手順1(固定):前処理・固定/脱灰・整形(1st Stage)
 E. 実技手順2(包埋):脱水・パラフィン浸透・包埋(2nd Stage)
 F. 実技手順3(薄切):ミクロトーム操作、薄切・伸展/接着(3rd )
 G. 実技手順4(染色):染色、脱水、封入(4th Stage)
 H. 代用キシレン法
 I. 主な関連解説と参考書一覧


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E. 実技手順2(包埋):脱水・パラフィン浸透・包埋>
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現在の
Fig No.


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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