実演生物学:Ch2. -6A,:パラフィン切片HE染色標本(ニジマス稚魚)の作製法
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 主な物品:模式図を参照(図X)。
 1. 準備と注意事項
 2. 脱水/染色/封入 (工程の時間割)          
 3. 封入(Mounting)
 4. 模式図とボタン番号の関係

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 接着乾燥が完了した「貼付けプレパラート」は、染色カゴに入れ、染色ツボに用意した以下の系列溶液で染色工程の処理を行なう。以下の1〜14の操作は連続して染色壺を利用して行う


<1. 準備と注意事項>

  1. 20枚用の染色カゴに対応する通常の染色ツボの容量は約200mlである。溶液をポリプロピレン製のボトルなどに調製する。キシレンにはガラス瓶(ショットボトルなど)やPMP製(ポリメチルペンテン、TPX製)を使用する。溶液は繰り返し使用することができる。染色ツボには7割程度の液を入れる。
  2. キシレンには水分は溶解しないので、その取り扱いには注意する。水分は水滴として沈下するので、水滴ができてしまったキシレン(白濁しない状態のもの)は、その様態の理解した上で、適切な用途に利用する。
  3. キシレンはシンナーのようなものなので換気に注意して使用する。エタノール系列も含め火気厳禁である。
  4. 貼付けプレパラートを入れる「染色カゴ」は水分が付着ないことを確認する(染色全工程が終了しキシレン状態の染色カゴをすぐ使用したいときは、そのまま使用できるので洗浄などは行なわない)。
  5. スライドガラスの表裏が分かりにくくなるので、染色カゴにプレパラートを入れる時には、裏表の方向性を共通にする。例えば、染色カゴの方向性や目印が不明瞭な時には、木綿糸などで目印を付けるなどして、オモテウラは一目瞭然としておく。
  6. 染色カゴを次の系列溶液(ツボ)に移動させる時には、カゴをツボのふちに傾けカゴの残留液を除き、紙タオルなどで余液を拭った後に静かに入れる。
  7. 1dip、Few dipとは、溶液へ静かに入れた後、静置することなく、静かに持ち上げる、という意味で「上げ下げ」することを云う。
  8. ヘマトキシリン染色後の「水洗」操作とは、水道の流水を静かに流しながら染色カゴを水に浸しておくことをいう。流水を染色切片に直接当ててはいけない。流水による水洗によりヘマトキシリン液で染まった切片は青みのある色に変化する。
  9. エオシン染色の処理時間はその時々で異なるので、本染色の前には「1dip」からはじめ、染色時間の適正を試す。つまり、ヘマトキシリン染色の水洗が終了したプレパラートを1枚取り出し、試しにエオシンに1秒間だけ入れ取り上げ、すぐDW(蒸留水)のツボに入れ、その「赤み」を確認する。薄い場合にはその処理時間を長めにして再試する。適正なエオシン時間を決めておく。但し、DWの後のエタノール系列を進むと幾分エオシンの色落ちがするので、その点も考慮し、試し染色による適正時間を決める。
  10. エオシンの染色性がかなり悪い時には、染色ツボに1滴、酢酸を加えてみる。染色性があがるはずなどで、改めて試し染色を行なう。酢酸をはじめから沢山入れてはいけない。
  11. 染色ツボを翌日も使用する場合は、ラップフィルムを三つ折りし、ツボとフタのパッキングとして使用する。キシレンについても有効である。

<2. 脱水/染色/封入 (工程の時間割)>

処理・操作        処理時間 
脱パラフィン(deparafinization)
 □ 1:Xylene 1st         10分
 □ 2:Xylene 2nd        10分
 □ 3:Abs.EtOH(キシレン除去) 5分
親水処理(Hydration)
 □ 4:95% EtOH    2〜3分,またはそれ以上でも良い
 □ 5:80% EtOH    2〜3分,またはそれ以上でも良い
 □ 6:70% EtOH    2〜3分,またはそれ以上でも良い
 □ 7:50% EtOH    2〜3分,またはそれ以上でも良い
 □ 8:Water(DW)   2〜3分,またはそれ以上でも良い
染色 (H/E)
 □ 9:Mayer's Hematoxylin      15分
  (試し染色で処理時間を決めておく)
 □ 10:水洗(流水、水道水)    10〜20分
  (青みがかるまで流水で脱色、標本に直接流水をかけない)
 □ 11:Eosin (x4希釈液の場合)  30秒〜1分程度
  (試し染色で処理時間を決めておく)
 □ 12:Water(DW/水道水)    few dips(数回上下させる)
  (染色判定法:軟骨が青く筋肉が赤く染まるようにする)
脱水(Dehydration)と透徹
 □ 13:70% EtOH        1 dip(または数回上下させる)
 □ 14:80% EtOH        1 dip(または数回上下させる)
 □ 15:90% EtOH        1 dip(または数回上下させる)
 □ 16:95% EtOH        few dips
 □ 17:99.5% EtOH(くみ出し*) few dips
 □ 18:Abs. EtOH 1st       3分,またはそれ以上も可
 □ 19:Abs. EtOH 2nd      3分,またはそれ以上も可
 □ 20:Xylene 1st (中間剤)    3分,またはそれ以上も可
 □ 21:Xylene 2nd(透徹/保存)    3分,またはそれ以上も可
 □移動用に用いるキシレンツボに入れ封入操作を待つ(乾燥厳禁)                   


<3. 封入(Mounting)>

 封入剤(ビオライトなど)とカバーガラスで染色切片を封入し永久標本とする。封入剤は「ビオライト(Bioleit:応研商事940728)」などであるが、封入剤の粘度は事前に確認する。本操作ではキシレンガスが多量に出るので、換気や風向きに充分注意して、ガスをなるべく吸引しないような実験台で行うこと。

ビオライト扱いのヒント

1)ビオライトはキシレンで溶解するが、キシレンは揮発性が高いので、ビオライト瓶のキャップを解放すると、すぐ堅くなり使いにくくなる。そこで時折、小量のキシレンをビオライト瓶の中に滴下し柔らかさを加減する。空気が混入しないようゆっくり瓶を回転させる。
2)また、使用するビオライト滴下用の竹串はキシレンに浸けておき、要時、キシレンを紙タオルなどで軽くふき取ってから、キシレン壺に入れると使いやすい。
3)換気に注意する。

操作手順:図を参照

  1. 染色カゴを移動用キシレン壺に移し、封入操作を行う実験台に移動する。必要物品を確認する。
  2. 「フスマ(封入用プレパラートプレート)」の片側の裏面に1cm程度の物体をいれフスマを傾斜させる。オモテウラを間違えないように注意しプレパラートを「フスマ」に置く。乾燥厳禁なのですぐ「次」の封入剤の滴下を行なう。
  3. つまり、針金に付けた封入剤(ビオライト)を染色切片の上に数滴ほど滴下しカバーガラスを載せる。
  4. カバーガラスの自重でビオライトが広がってから[オモシ]を載せる。この時、傾斜させたフスマの下辺にスライドガラスとカバー硝子の辺を合わせる。カバー硝子がはみ出さないようにする。スライドガラスとカバーガラスを密着させる。そのまま放置し乾燥させる。
  5. 乾燥後、封入剤がはみ出しいる時にはナイフで切取る。ガラス面をナイフでカンナの要領で薄切りにすると簡単に取り除ける。

<図表一覧と対応パネルボタン>

 


<目次と移動ボタンの対応>
<パラフィン切片HE染色標本の作製法>
 A. 組織標本作製技法の概要と安全対策
 B. 一覧表:組織標本作製工程
 C. 主な試薬と備品、その調製法
 D. 実技手順1(固定):前処理・固定/脱灰・整形(1st Stage)
 E. 実技手順2(包埋):脱水・パラフィン浸透・包埋(2nd Stage)
 F. 実技手順3(薄切):ミクロトーム操作、薄切・伸展/接着(3rd )
 G. 実技手順4(染色):染色、脱水、封入(4th Stage)
 H. 代用キシレン法
 I. 主な関連解説と参考書一覧


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G. 実技手順4(染色):染色、脱水、封入>
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現在の
Fig No.


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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