実演生物学:Ch2. -6A,:パラフィン切片HE染色標本(ニジマス稚魚)の作製法
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 1. 染色法の要点と注意事項
 2. 主な材料(試薬と物品)
 3. HE染色工程(代用キシレン法)
 4. 代用キシレンによるHE染色工程:概要
 5. 模式図とボタン番号の関係

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 有機溶剤「キシレン」の代替溶液として、極めて安全な「代用キシレン」を用いた染色工程も記す。実践学習の場においても教材実験として導入可能な工夫と方法である。基本となる方法は上記「H. 実技手順 4th Stage(染色):染色、脱水、封入」、つまり、キシレンを用いた方法そのものであるので、不明な点は「H」を参照する。
 キシレンの代替溶液には製造販売元の違いから種々の製品が市販されているが、本編では「サクラファインテック」の「ティッシュクリアー」を用いた方法である。本溶液の詳細については「サクラファインテック」が提供する解説書を参照すること。注意事項としては、代用キシレンには封入剤との相性があり、使用できない一般的な封入剤もあるので注意が必要である。ティッシュクリアーに対応する封入剤として本編では「クリアーマウント」を用いる。

<1. 染色法の要点と注意事項 >

  1. 図に示すようなポリプロピレン製の小型スライドボックス(プレパラートボックス)などを利用し、染色を行なう(系列配列した染色ツボは使用しない)。貼付けプレパラートを挿入したスライドボックスに溶液を入れ処理し、流し去り、新たな系列液を入れる、の繰り返しで行なう。
  2. 処理液の置換効率を高めるため、1つのボックスに入れる貼付けプレパラート(スライドガラス)の数は2ないし3枚までとする。表裏が分かるように配慮し、且つ、切片の貼付け面には隙間を大きく与えるように挿入する。
  3. 系列溶液を入れる時にはゴム球付きのピペットなどを用いるが、液は切片貼付け面の裏側から入れる。
  4. 溶液処理中のスライドボックスが転倒しないようにガラスビーカーなどに立てながら操作を行なう。溶液の処理時間中にピンセットでプレパラートをゆっくり上下させ(「上げ下げ」操作)、処理効率を高める、などの工夫も必要である。
  5. 溶液処理後にスライドボックスから取り除いた排出液は再利用が可能なので、ポリプロピレン製(PP)のボトルなどに個別に回収する。方法は、スライドボックスを逆さにして溶液をボトルに流し入れる。この時、残留液がスライドボックスに残らないように配慮し、余液は紙タオルなどをボックスの入り口に押しあて除く。
  6. ヘマトキシリン染色の折には、15分間の初期にピンセットなどでプレパラートをゆっくり上下させ、均質な染色効果が得られるようこの「上げ下げ」操作を必ず複数回行なう。
  7. 「ヘマトキシリンの水洗」は、スライドボックからピンセットでプレパラートを取り上げ、流水の水バットと「はしご(スライドガラススタンド)」を利用し行なう。
  8. エオシン染色は短時間なので、エオシンの染色ツボを利用して行なう(スライドボックスにエオシン液は入れない)。
  9. 染色液が衣服に付着しないよう充分注意した操作に配慮する。
  10. ヘマトキシリンとエオシンによる染色操作の時は、染色液が衣服に付着しないよう充分注意した操作に配慮する。

<2. 主な材料(試薬と物品)>

1)貼付けプレパラート、2)小型プレパラートボックス、3)ビーカー、4)ピンセット、5)ティッシュクリアー、5)99.5%エタノール、7)吸水剤、8)HE染色液、9)紙タオル、10)試薬液ボトル、11)ハシゴ、12)10mlピペットとスポイトゴム球、

<3. HE染色工程(代用キシレン法)>

 処理・操作        処理時間  
脱パラフィン(deparafinization)
 □ 1:代用キシレン (1) 10ml    7分
 □ 2:代用キシレン (2)       7分
 □ 3:代用キシレン (3)       3分
 □ 4:代用キシレン (4)       3分
親水処理(Hydration)
 □ 5:純エタノール(1)       2分
 □ 6:純エタノール(2)       2分
 □ 7:70%エタノール       2分
 □ 8:Water(DW)         2分
染色 (ヘマトキシリン・エオシン:H/E)
 □ 9:ヘマトキシリン       15分程度〜
  (はっきり青く染まるまで処理する)
 □ 10:水洗(流水/水道水)    10〜20分程度
  (青みがかるまで流水で脱色)
 □ 11:エオシン         30秒〜1分程度
  (短時間の予定なので)
 □ 12:Water(水道水)      30秒程度
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  本染色の前に「試し染色」を行い適性時間を確認する。
  染色判定法:軟骨が青く筋肉が赤く染まるようにする
脱水処理(Dehydration)と中間剤/透徹
 □ 13:95%エタノール 30秒
 □ 14:純エタノール (1) 30秒
 □ 15:純エタノール (2) 30秒
 □ 16:純エタノール (3) 2分
 □ 17:純エタノール (4) 2分
 □ 18:代用キシレン (1) (中間剤) 3分〜
 □ 19:代用キシレン (2) (中間剤) 3分〜
 □ 20:代用キシレン (3) (透徹) 2分〜
 □ 21:代用キシレン (4) (透徹/保存) 2分〜
封入(Mounting):「フスマ」を利用して行う。
 □ 22:封入剤(クリアーマウント)を滴下、
   カバーガラス/オモシを載せる。 方法の詳細は「H」に準じる。

<4. 代用キシレンによるHE染色工程:概要>

  処理・操作             処理時間
1)脱パラフィン(deparafinization)
   代用キシレン系列 (1〜4)    20分程度
2)親水処理(Hydration)
   エタノール系列 (1〜3) と    DW   10分程度
3)HE染色 (Staining)
  ヘマトキシリン→水洗      30分程度
  エオシン →水洗 2分程度
4)脱水処理(Dehydration)と中間剤/透徹
   エタノール系列(1〜4)   6分程度
  代用キシレン系列(1 〜4)     10分程度
5)封入(Mounting)
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     総操作時間・・・・約80〜100分程度

 

<図表一覧と対応パネルボタン>

 


<目次と移動ボタンの対応>
<パラフィン切片HE染色標本の作製法>
 A. 組織標本作製技法の概要と安全対策
 B. 一覧表:組織標本作製工程
 C. 主な試薬と備品、その調製法
 D. 実技手順1(固定):前処理・固定/脱灰・整形(1st Stage)
 E. 実技手順2(包埋):脱水・パラフィン浸透・包埋(2nd Stage)
 F. 実技手順3(薄切):ミクロトーム操作、薄切・伸展/接着(3rd )
 G. 実技手順4(染色):染色、脱水、封入(4th Stage)
 H. 代用キシレン法
 I. 主な関連解説と参考書一覧


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H. 代用キシレン法(主に染色法)>
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