< “考える生物学”:演習の解説/回答 : [研究会TP]へ>
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<演習解説の目次>
演習1(Exp2)の解説. 培養温度とゼラチンの物性について(演習/質問へ戻る)。
演習2.
協議1.階層性(構造レベル)と器官系区分について
<演習1の解説(羽曽部の回答)>
考察/質問(Q1)お絵描き実験を首尾よく完了させるためはどのようなことに注意すれば良いでしょうか。その重要度を考慮し優先順位で回答してください。
その答えは下記の順列
a.ゼラチン塗抹→b.細胞の単離分散状態→c.1次培養の時間→d.培養温度→e.2次培養の時間、
Q1の理由/解説(迅速簡便確実に「綺麗な細胞シートを作る」実践的な観点)
- ゼラチン: 温度に関係なく塗抹ゼラチンは吸水・膨潤します。細胞が接着伸展する時、細胞骨格の形成(アクチン重合)により足場ゼラチンに張力/引っ張り力が加わります。その結果、細胞はゼラチンを引っ張ります。厚塗りや30℃培養で軟化したゼラチンの場合は剥がしてしまいます。従って「厚塗りは厳禁」であり、本演習の条件では「ゼラチン塗抹」がキーファクターになります。最重要です。 【実践方針】 湯煎高温ゼラチンでできるだけ薄く強い筆圧で塗抹する(そのためには綿棒の選択も重要です)。 【発展考察】 厚塗りゼラチン、30℃、Caの有無の2次培養により細胞の「引っ張り力(剥がれる剥がれない)からアクチン重合の強さが想像できるはず?です。 【学習キーワード】 ゼラチン/コラーゲン、変性蛋白、骨切り実験、・ ・ ・ ・ ・ 、
- 単離分散: 遠心再浮遊の時に「上澄み」が残ると接着伸展の速度が非常に遅くなります。また、タッピングやピペッティングが不十分だと細胞は単離分散せず「塊」のままなので、隙間だらけになっていしまいます。迅速の観点から重要です。 【実践方針】 単純操作ですが意味意義の理解が難しいので「丁寧なデモンストレーション」が不可欠です。あるいは本工程は「担当者による一括処理」で対応しましょう。 【コメント】 ただし、塊があっても1次培養の時間をできるだけ長く(例えば6時間あるいは一晩)培養をするとこの問題は解消します。細胞が自律的に運動して隙間に移動し細胞シートを形成します(発展考察?)。 【学習キーワード】 ・ ・ ・ ・ 。
- 1次培養: 設定条件では1次培養の時間は「60分」です。細胞は生育可能温度であれば培養温度に関係なく1次培養60分後には「ほぼ綺麗な細胞シート」を作りますが、顕微鏡レベルでは少し隙間があるので(+3)です。時には伸展が不十分(+2)かもしれません。 【実践方針】 綺麗な細胞シートを作成するには培養温度に関係なく最低90分以上の1次培養が必要です。この段階で固定染色すればかなり綺麗な細胞シートが観察できます。但し、数時間以上の1次培養が最も確実です。 【コメント】 生きものの自律性には時間が必要です。培養時間は「待ち時間」ですが細胞自身にとっては大変重要な時間であるを意識すればこの実験の意味意義は深まります。 【学習キーワード】 ・ ・ ・ ・ 。
- 培養温度: Exp1.CG培養では迅速簡便のため培養温度が重要です(25℃から30℃設定が最適です)。しかし、Exp2お絵描き実験では便宜的・実践的には培養温度はほとんど無関係になります。但し、ゼラチンの軟化を防ぐためには低温が適しています。例えば18℃でもお絵描き実験は可能です。 【実践方針】 室温でOKです。夏場は28℃を超えるようであれば1次培養だけで実験は完了させましょう。エアコン(クーラー)が可能な場合は少し低めに設定しましょう。温度よりゼラチンの「薄塗り」が重要です。 【学習キーワード】 ・ ・ ・ ・ 。
- 2次培養: 2次培養(Ca-Med)は初学者に混乱を招くかもしれません。 【実践方針】 迅速簡便「確実」の方針のためには、よって、重要ではないとなります。しかし、1次培養(細胞-基質間結合反応)が十分であり、また室温(24℃以下)であれば、ゼラチン基質(固相)が維持されるので、その結果として緻密な細胞配列(細胞-細胞間結合が関係)による細胞シートになります。 【学習キーワード】
- その他(1次培養後の未伸展細胞の除去): Exp2は大過剰の細胞濃度(飽和密度以上)で行います。その結果、固相上の伸展細胞(単層細胞/細胞シート)の上には、1次培養の後に検鏡すると多数の球状の未伸展細胞が弱い接着状態でシートの上に載っています。これを取り除くことにより綺麗な細胞シートの観察が可能となります。それで1次培養が終了したら「シャーレを回転する・シャーレ側面を軽くペンなどで叩き振動を与える」などにより、それら球状細胞を浮遊化して捨てる(液替えをする)、という主義は重要です。 【実践方針】 単純操作ですが意味意義の理解が難しいので「丁寧なデモンストレーション」が不可欠です。 【学習キーワード】 ・ ・ ・ ・ 。
演習Q1解説に関連して(余裕があればお願いします)
1)「1.感想、2.意見、3.疑問、4提案」の区分でお願いします。
<演習1に関するコメント:羽曽部>
結論から言えば、模範回答は「実験工程その通りの順列でその重要度が決まる」となりました。つまり、細胞が生きるに不可欠な始まりの「足場」となる物質・固相状態が最重要です。細胞培養とは生体組織細胞が生きる様態を再現すること(技術)、それで動物細胞の基本的な性質の1つは「足場依存性」です。これを生徒さんが簡単に意識する(考える機会を提供する)方法として「お絵描き実験」は有効だと思っています。それでその経緯から我々の方針「論より証拠・されどロジックも必要:考える学習」が可能になるのではと思っています。
余談ですが、工程順列を考えるとゼラチン塗抹前の確認「フィルムバッグ細胞の状態(細胞状態:有効期限)」が最重要となりますが、これは別の機会に解説します。
さて、上記の解説(回答)を読みながら、読み終えて、皆さんはどのように思いましたか。少し心配ですが、今回の演習はいかがでしたか。ご意見などをお願いします。
回答の内容が理解できれば「お絵描き実験」は失敗なく発展的に誰でも可能になると思いませんか。座学「演習」の有効性です。理解を深める方法は他にもあるのではと思いますが、何か良い方法方策があれば是非ご提案ください。教えてください。
私は「1.共有命題→2.実例紹介(描き)→3.説明(見て)→4.考察(考える)→5.実践(実験検証)→6.発展展開」の手順(プロセス)を意識する必要があると思っています(学習の基本)。今回は上記に従い「1.迅速簡便確実な方法とは?/2.そのための演習・質問/3.その回答(解説)」まで進みました。このプロセス・方法はいかがでしょうか。違和感ありますか。
次は皆さんが、4.考察(計画を考える)→5.実践(実験検証する)→6.発展展開(実験結果に基づき発展させる)へと実践的に進めるのかなと思っています。
我々の目標は「迅速・簡便・確実な実践マニュアルを作る」ですが、そのためには「センター試験の実施要領」のような丁寧かつ明瞭な記載方法が良いのではと思っています。つまり上記の【実践方針】のような記載方法が必要と思っています。いかがでしょうか。
不特定の高校教師がマニュアルを読んで理解できる作文にはそれで皆さんの協力が不可欠です。それができれば私抜きで皆さんが柱となり各自の地域で独自にその実験学習や発展展開が可能となると思っています。いかがでしょうか。
繰り返しとなりますが、生物学習におけるポイントとは「論より証拠・されどロジックも必要」ということ、またそれには段階を踏む(プロセス)が必要ということだと思っています。フェアな公教育であろうと思っています。
なお、私が実践学習(座学)の場で実際に行っている「お絵描き実験」 は下記のような具合です。誰でも時間的な制限があっても可能な実例です。
本演習のまとめ
以上のような演習に関連して皆さんの「意見・疑問・提案」などをこのサイトに掲載というのはどうでしょうか。いろいろな素朴な観点が必要です。ぜひご回答ください。お願いします。
<はじめに>
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<1-3>
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<4-7>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.4 中 Fig.5 右 Fig.6 )
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<7-9>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.7 中 Fig.8 右 Fig.9 )
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<10-12>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.10 中 Fig.11 右 Fig.12)
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<13-15>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.13 中 Fig.14 右 Fig.15 )
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<16-18>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.16 中 Fig.17 右 Fig.18 )
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<19-21>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.19 中 Fig.20 右 Fig.21)
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<22-24>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.22 中 Fig.23 右 Fig.24 )
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<25-27>
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<28-30>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.28 中 Fig.29 右 Fig.30 )
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<31-33>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.31 中 Fig.32 右 Fig.33 )
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<34-36>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.34 中 Fig.35 右 Fig.36 )
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<37-39>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.37 中 Fig.38 右 Fig.39 )
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<40-42>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.40 中 Fig.41 右 Fig.42 )
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<43-45>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.43 中 Fig.44 右 Fig.45 )
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<46-48>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.46 中 Fig.47 右 Fig.48)
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<49-51>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.49 中 Fig.50 右 Fig.51)
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<52-54>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.52 中 Fig.53 右 Fig.54)
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<55-57>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.55 中 Fig.56 右 Fig.57)
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<58-60>
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(画像クリックで拡大表示: 左 Fig.58 中 Fig.59 右 Fig.60)
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